中小企業がECを始めるための商品・顧客・販売目標・運営体制を整理するイメージ

ECサイト

中小企業がECを始めるには何から準備すべき?5つの整理と最初の90日

2026年11月3日

ECを始めるときは、いきなり高機能なサイトを作らなくても大丈夫です。まずは「商品・顧客・目標・売り方・運営する人」の5つを決めましょう。そのうえで商品数や機能を絞り、小さく販売を始めて反応を確かめます。

この記事を更新している2026年11月3日、名古屋では名古屋城秋まつりが11月23日まで開催されています。街が秋の催しでにぎわう頃、ECの現場では年末商戦や冬の贈り物に向けた準備が始まります。季節商品を扱うなら、「サイトをいつ作るか」だけでなく、お客様へ約束した日に届けられるかから逆算してみてください。

愛知県でも、10月23日に県内中小企業向けのデジタル化・DXワークショップ後半日程が発表されました。11月24日には名古屋会場で開催予定です(あいち産業DX推進コンソーシアム)。ECも考え方は同じです。ツールを入れるだけで終わらせず、受注、在庫、発送、顧客対応まで、現場で無理なく使える形につなげていきます。

ECサイトは、公開してからが本当のスタートです。受注、在庫、発送、お問い合わせ、売上分析まで続けることで、少しずつ販売の仕組みになっていきます。

経済産業省が2025年8月に公表した最新の年次調査では、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円、前年比5.1%増、物販系分野のEC化率は9.8%でした(経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」)。市場は伸びていますが、それだけで自社の商品が選ばれるわけではありません。この記事では、愛知・岐阜・三重・静岡など東海地方の中小企業を想定し、準備の進め方を順番にお伝えします。

ECを始める前に決める5つの項目

最初に整理したいのは、商品、顧客、販売目標、販売方法、運営体制の5項目です。はじめから完璧でなくても構いません。まずは仮の答えを置いてみましょう。何も決めずに制作へ進むと、載せる情報や必要な機能を選びにくくなります。

準備項目最初に決めること確認したい問い
商品最初に販売する商品と利益送料や手数料を含めても利益が残るか
顧客最初に届けたい顧客像どんな悩みや目的で商品を探すか
販売目標売上、注文数、期間何件売れれば次の投資を判断できるか
販売方法自社EC、モール、既存サービス顧客との出会い方に合っているか
運営体制担当者、作業時間、判断者受注から発送まで無理なく続けられるか

この5項目は、サイト制作会社へ相談するときにも役立ちます。「ECサイトを作りたい」に加えて、商品や顧客、目標、社内の事情まで共有できると、今必要な機能と後から追加できる機能を分けやすくなります。

私たちがECのご相談で最初に伺うのも、使いたいカート名ではありません。「誰に、何を、どんな理由で届けたいか」「社内では誰が毎週動かすか」です。機能の話を急ぐと、公開後に必要な商品情報や運営時間を見落としやすくなります。ECはWeb制作である前に、販売と業務の設計だと私たちは考えています。

ECを始める目的を一文にする

まずは、「商圏外へ届ける」「再注文の窓口を作る」「新商品の需要を確かめる」など、目的を一文で書いてみましょう。目的が見えると、検索・SNS対策、注文のしやすさ、少数商品での検証など、何から取り組むかを選びやすくなります。

商品・顧客・販売目標を数字と言葉で整理する

次は、販売する商品と顧客を少し具体的にしていきます。「良い商品だから売れる」と考えるだけでなく、お客様が比較するときに知りたい情報まで整理してみましょう。

最初の商品は絞る

ECを始める段階で、全商品を一度に掲載する必要はありません。まずは、次の条件を確認しやすい商品から選んでみてください。

  • 誰のどんな課題に応える商品かを説明できる
  • 写真と文章で特徴や使い方を伝えられる
  • 販売価格から原価、送料、決済手数料などを引いて利益を見込める
  • 在庫、梱包、発送の方法が決まっている
  • 返品や交換の条件を定められる

送料は、お客様の購入判断と利益の両方に関わります。大きさ、重量、温度帯、配送地域、複数購入時の梱包まで含め、価格を決める前に一度試算しておくと安心です。

食品、酒類、化粧品、医療機器、中古品などは、商品によって許可、届出、表示の確認が必要です。自社の商品に関係する法令や業界ルールは、所管する行政機関や専門家へ確認してください。

顧客を「属性」だけで決めない

顧客像は「40代女性」「愛知県在住」といった属性だけでは、まだ少しぼんやりしています。同じ年代や地域でも、商品を探す理由や不安は人によって違うからです。

「いつ、何に困り、どんな言葉で検索し、何と比べ、購入前に何を不安に感じるか」まで考えてみます。既存のお客様がいる場合は、お問い合わせや商談、店舗での質問、レビューを振り返ってみてください。実際の言葉から考えると、想像だけに頼らず整理できます。

ECの商品説明には、社内が伝えたい特徴だけでなく、顧客が判断するための情報を載せます。顧客を決める具体的な手順は、次の記事で解説しています。

売上目標を注文数に分解する

売上目標は、注文数と平均注文額に分けると考えやすくなります。たとえば月間売上30万円、1回の平均注文額を5,000円と見込むなら、必要な注文数は60件です。

購入率を仮に1%と置くと、60件の注文には6,000回の訪問が必要です。もちろん、これは考え方をつかむための仮定で、成果を保証する数字ではありません。大切なのは、目標と実績の差を見られる状態にしておくことです。

公開後に見る指標は、売上だけではありません。訪問数、購入率、平均注文額、リピート率などに分けると、次の改善点を考えやすくなります。指標の決め方は、次の記事も参考にしてください。

販売方法と運営体制を小さく設計する

ECサイトと受注・在庫・配送・分析をつなぐIT業務フロー

商品と顧客、目標が見えてきたら、販売方法を選びます。主な選択肢は、自社ECサイト、ECモール、既存の簡易的な販売サービスです。どれか一つが、すべての会社にとって正解というわけではありません。

自社ECは、ブランド体験やお客様との関係をつくりやすい方法です。一方で、検索やSNSなどから来てもらう工夫が欠かせません。ECモールは利用者のいる場所へ出店できますが、ほかの商品と比べられやすく、手数料もかかります。簡易サービスを選ぶなら、必要な決済、物流連携、分析機能がそろっているかを確認します。

自社ECで使うASPは、インターネット経由でECに必要な機能を利用するサービスです。月額料金だけで決めず、決済、商品登録、在庫、配送、分析、外部システムとの連携、将来の移行まで見ておきましょう。比較するときの視点は、次の記事で解説しています。

制作費より先に、毎週の運営時間を確保する

EC運営には、次の作業があります。

  • 商品・価格・在庫の更新
  • 受注、梱包、発送、問い合わせ・返品対応
  • 写真や記事、SNSでの情報発信
  • 売上・アクセスの確認と改善

担当者名を決めるだけでなく、各作業に使える時間と代行者も考えておきます。実店舗と在庫を共通にする場合は、売り違いを防ぐ更新方法も必要です。最初からすべてを自動化しなくても構いません。注文数が少ないうちに手作業で流れを確かめ、負担が増えた部分から仕組み化する方法もあります。

手作業で始める場合も、担当者と確認方法は決めておきましょう。受注から発送、売上記録までの流れを紙や表に書くだけでも、必要な機能が見えやすくなります。

アイヴィクスのEC支援では、サイトの見た目だけでなく、戦略設計、構築、集客、分析・改善までを一つの流れとして考えます。ECと受発注、在庫などの業務がつながる場合は、現場の運用も含めて整理します。

公開前の確認と最初の90日で見る数字

ECサイトを公開する前に、お客様が安心して選べる情報と、社内が無理なく安全に運営するための準備を確認します。

通信販売では、特定商取引法に基づき、販売価格と送料、支払時期と方法、引渡時期、返品・解約条件、事業者情報などの表示が求められます。詳しい要件は、消費者庁の特定商取引法ガイド「通信販売」で確認できます。商品や販売方法によって条件が異なるため、公開前に最新情報を確認しておきましょう。

また、ECでは注文者の氏名、住所、連絡先などを扱います。取得する情報と利用目的を整理し、プライバシーポリシーを用意します。アクセス権限、パスワード、退職・異動時のアカウント管理、データの保管方法も決めておくと安心です。個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドラインを基に、自社の取り扱いを確認しましょう。

公開前には、担当者自身がお客様役になり、スマートフォンからテスト注文してみてください。商品を探し、カートへ入れ、決済し、注文メールを受け取ります。管理画面で受注を確認し、発送連絡を送るところまで通すと、見落としに気づきやすくなります。送料、在庫、割引、メール文面、リンク切れも一緒に確認しましょう。

スタンフォード大学のWeb Credibility Projectは、サイトの信頼性を高める指針として「Make it easy to verify the accuracy of the information on your site.(サイト上の情報が正確か、検証しやすくする)」と示しています(Stanford Guidelines for Web Credibility)。会社情報、連絡先、根拠となる出典、記事の運営者を分かりやすい場所に置くことは、お客様が安心して判断するための設計です。

Baymard Instituteが継続して集計する調査では、オンラインショッピングカートの平均放棄率は70.19%と報告されています(Cart & Checkout Usability Research)。自社にも同じ割合が当てはまるとは限りません。それでも、商品ページだけでなく、カートから購入完了まで実機で確かめておきたい理由は十分にあります。

最初の90日は「学ぶ期間」と考える

公開後の90日間は、最初に立てた仮説が合っているかを学ぶ期間と考えてみてください。週ごとに見る数字と、月ごとに判断する数字を分けると、運営しやすくなります。

週次では受注漏れ、在庫差異、お問い合わせ、訪問数、注文数を確認します。月次では売上、購入率、平均注文額、商品別利益、流入経路、リピート状況を見ます。短期間の数字だけで結論を急がず、お客様から届いた質問や離脱箇所も一緒に見ていきましょう。

改善は、一度に一つずつで十分です。送料の明記、FAQの追加、購入ボタンまでの情報整理など、まず一つ仮説を決めます。変更前後の数字とお問い合わせを記録すると、その積み重ねが次の判断に使える自社の一次情報になります。

まとめ|ECは「作る前の整理」と「公開後の改善」で育てる

中小企業がECを始めるときは、次の順番で進めると判断しやすくなります。

  • 商品・顧客・目標・販売方法・運営体制を先に決める
  • 全商品・全機能を一度に載せず、小さく販売して需要を確かめる
  • 送料、利益、在庫、発送、返品まで含めて運営の流れを作る
  • 公開前にスマートフォンでテスト注文し、表示と個人情報の扱いを確認する
  • 公開後90日は、数字とお客様の質問を記録し、一度に一つずつ改善する

ECサイトは、作って終わるものではなく、お客様との関係と社内の一次情報を育てる事業基盤です。迷ったときは機能比較だけに戻らず、「誰にどんな価値を届けたいか」「誰なら運営を続けられるか」をもう一度考えてみてください。

ECの始め方に関するよくある質問

Q1. ECサイトを始めるには、いくら必要ですか?

費用は、販売方法、商品数、デザイン、決済、物流連携によって変わります。初期費用だけでなく、月額料、決済手数料、送料、撮影、運営人件費、集客費も含めて考えてみてください。

Q2. 商品が1つでもECを始められますか?

はい、始められます。商品の価値や使い方を丁寧に伝えやすい一方で、必要な注文数と、送料を含めても利益が残るかは事前に試算しておきましょう。

Q3. 自社ECとECモールは、どちらから始めるべきですか?

お客様とどこで出会うかを基準に考えます。ブランド体験と継続的な関係を重視するなら自社EC、モール内の需要を確かめたいならECモールが候補です。併用する場合は、在庫、価格、顧客対応のルールを決めておきましょう。

Q4. EC専任者がいなくても運営できますか?

注文数と商品数が少ない段階なら、ほかの業務との兼任でも始められます。ただし、作業時間、受注確認の頻度、休暇時の代行者、返品時の判断者は決めておくと安心です。

Q5. ECサイトは公開後、何を改善すればよいですか?

まずは、訪問数、購入率、平均注文額、商品別の利益、お問い合わせ内容を確認します。集客が足りないのか、商品ページの情報が足りないのか、カート以降で離脱しているのかを分けて考えます。課題を一つ選び、変更前後を記録しながら少しずつ改善しましょう。

参考資料


ECを始めたいものの、商品、販売方法、運営体制のどこから整理すべきか迷っている方へ。事業の課題を、まずは聞かせてください。小さく始める改善策を一緒に考えます。

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