投稿日:20250611
更新日:20250611
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kintone
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「日々の業務がExcel管理では限界…」「チーム内の情報共有がうまくいかない…」「もっと業務を効率化したいけど、専門的なシステム導入は難しそう…」
このような悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくないでしょう。情報が分散し、必要な時に必要なデータが見つからない、手作業が多くて時間がかかる、といった課題は、多くの企業で共通して聞かれます。
もし、プログラミングの専門知識がなくても、自社の業務に合わせて柔軟にシステムを構築でき、情報の一元管理や業務プロセスの自動化まで実現できるツールがあるとしたら、どうでしょうか?
この記事では、そのような課題を解決する強力な味方となり得るクラウドサービス「サイボウズ社のkintone(キントーン)」について、初心者の方にもわかりやすく、その基本概要から具体的な活用方法、導入効果、さらには注意点までを徹底的に解説します。kintoneがどのようにあなたの会社の業務効率化を実現し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する力となるのか、この記事を読めばその全貌が明らかになるはずです。専門知識は必要ありません。わかりやすい言葉で、kintoneの世界へご案内します。お急ぎの方は、下記の目次から気になる項目をクリック して、読みたい内容へジャンプしてください!
1: kintoneとは?初心者にもわかりやすく解説
kintone(キントーン)という名前を耳にする機会が増えてきたけれど、一体どのようなサービスなのだろうか?と疑問に思っている方も多いでしょう。ここではkintoneの基本的な概念から、なぜ多くの企業に注目されているのか、そして既存のツールと何が違うのかを、初心者の方にも理解しやすいように解説します。ついに導入企業38,000社を超えたkintoneの導入を検討する上で、まず押さえておきたい基礎知識をここでしっかりと学びましょう。
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1-1: kintoneの基本概要と仕組み
kintone(キントーン)とは、サイボウズ株式会社が提供するクラウドサービスです。その最大の特徴は、プログラミングの専門知識がない人でも、自社の業務に合わせた業務アプリケーション(略して「アプリ」)を、まるでブロックを組み合わせるように簡単かつ迅速に作成できる点にあります。この「手軽さ」こそが、kintoneが多くの企業で業務改善のツールとして選ばれている理由の一つです。
kintoneの仕組みの核心は、この「アプリ」にあります。顧客情報、案件の進捗、日々の業務報告、問い合わせ内容など、企業活動におけるあらゆる情報を管理するための箱(データベース)を、ユーザー自身が自由に設計できるのです。例えば、これまでExcelや紙で管理していた顧客リストや案件管理表を、kintone上で専用のアプリとして作成し、必要な情報を一元的に管理・活用できるようになります。
アプリの作成は、基本的にマウス操作の「ドラッグ&ドロップ」で行えます。必要な項目(例えば、会社名を入力するテキスト欄、日付を選択するカレンダー、ファイルを添付する機能など)を選んで配置していくだけで、自社の業務フローに最適化されたシステムが現場レベルで構築可能です。これにより、IT部門に頼ることなく、業務を最もよく理解している現場の担当者が主体となって、迅速に業務改善を進めることができます。このような特性は、IT人材が限られている中小企業や、スピーディーな業務改革が求められる部門にとって、大きなメリットとなります。
また、kintoneはクラウドサービスであるため、インターネットに接続できる環境さえあれば、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからも、いつでもどこでも情報にアクセスし、業務を行うことが可能です。これにより、外出先でのデータ確認や入力、テレワーク環境でのスムーズな業務遂行が実現します。
kintoneは、単にアプリを作成するだけでなく、作成したアプリを通じてデータを共有し、業務プロセスを管理し、さらには外部サービスとの連携によって機能を拡張することもできる、非常に柔軟性の高いプラットフォームと言えるでしょう。この柔軟性と拡張性が、多種多様な業種・業務の課題解決に対応できるkintoneの強みとなっています。多くの企業がkintoneを活用し、日々の業務を効率化しています。このシステムの導入は、プログラミングの知識がなくても、手軽にアプリを作成し、管理できるため、非常に魅力的です。
1-2: キントーンが注目される理由と導入のメリット
kintone(キントーン)が多くの企業から注目を集め、導入が進んでいるのには理由があります。それは、従来の業務の進め方や情報管理のあり方を根本から改善し、組織全体の生産性を向上させる多くのメリットを提供できるからです。kintoneを導入することで、具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか。
サイボウズ社が挙げるkintone活用の4大メリットは以下の通りです 。
一元管理で経営状況を見える化できる:多くの企業では、顧客情報、案件情報、売上データなどがExcelファイルや個別のシステムに散在しがちです。これにより、情報が二重管理されたり、必要な情報を探すのに時間がかかったり、経営判断に必要な全体の状況把握が困難になったりします。kintoneを導入し、これらの情報を一元的に管理するアプリを作成することで、各部署の情報をリアルタイムに吸い上げ、経営状況を正確かつ迅速に「見える化」できます 3。これにより、データに基づいた的確な意思決定が可能になります。
使い慣れたツールは現場社員に浸透しやすく効果が出やすい:新しいシステムを導入する際、操作が複雑だったり、覚えることが多かったりすると、現場の社員になかなか使ってもらえず、せっかくの投資が無駄になってしまうことがあります。kintoneは、直感的でわかりやすいユーザーインターフェース(UI)を備えており、特別なIT知識がなくても比較的簡単に操作を覚えることができます 2。日頃からExcelなどを使っている人であれば、スムーズに移行しやすいでしょう。使いやすいツールは現場での活用が進みやすく、結果として早期に導入効果を実感できます。
システム管理コストを抑えられる:複数の業務課題に対応するために、それぞれ専用のツールやシステムを導入・管理していると、月額の利用料だけでなく、ユーザー管理やメンテナンスといった管理コストも膨らんでしまいます。kintoneであれば、一つのプラットフォーム上で多様な業務に対応するアプリを作成・運用できるため、複数のシステムを用意する必要がなくなります 2。これにより、ライセンス費用や管理の手間、コストを大幅に削減できます。さらに、kintoneは作成するアプリの数が増えても、基本的にユーザー数に応じた料金体系であるため、使えば使うほどコストパフォーマンスが高まるという特徴もあります。
現場主導でスピーディーな業務改善が可能:ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、業務プロセスの改善も迅速に行う必要があります。しかし、従来のシステム開発では、要件定義から設計、開発、テスト、導入までに多くの時間とコストがかかり、完成した頃にはビジネスの状況が変わってしまっている、ということも少なくありません。kintoneは、プログラミングの知識がなくても現場の担当者が自ら業務アプリを作成・改修できるため、業務の変化や新たなニーズに対してスピーディーに対応できます 2。これにより、情報システム部門に大きな負荷をかけることなく、継続的な業務改善のサイクルを回すことが可能になります。
これらのメリットに加えて、kintoneはスムーズな情報共有、場所や時間を問わないアクセス、そしてサイボウズ社やパートナー企業による充実した導入・運用サポート体制 も提供しており、これらが総合的にkintoneの価値を高め、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。部門ごとにサイロ化していた情報を一元化し、組織全体の生産性向上に貢献するkintoneの機能は、多くの業種で活用されています。
1-3: kintoneと他ツール(Excel・基幹システム等)との違い
kintone(キントーン)の導入を検討する際、多くの方が疑問に思うのは「今使っているExcelや、既に導入している基幹システムと何が違うのか?」ということでしょう。ここでは、kintoneとこれらの代表的なツールとの違いを明確にし、それぞれのツールの特性とkintoneがどのような位置づけになるのかを解説していこうと思います。
Kintoneとエクセルの違いは何ですか?
まず、最も比較されることが多いExcelとの違いについてです。Excelは非常に優れた表計算ソフトであり、個人レベルでのデータ集計や分析、簡単なリスト作成などには非常に便利です。多くの人が操作に慣れているというメリットもあります。
しかし、Excelは元々「個人用」に設計されたソフトであるため、複数人でのリアルタイムな情報共有や同時編集には向いていません。例えば、同じファイルを複数人で更新しようとすると、ファイルの競合が起きたり、誰が最新版を持っているのか分からなくなったりすることがあります。また、データ量が多くなると動作が重くなったり、詳細なアクセス権の設定や、複雑なワークフロー(申請・承認業務など)の構築は困難です。
一方、kintoneはチームや組織全体での情報共有と業務プロセスの管理を前提に設計されたクラウドサービス です。
情報共有と同時編集 : kintone上のデータはリアルタイムに共有され、複数人が同時にアクセスして情報を確認・編集できます。
データベース構造 : kintoneでは業務ごとに「アプリ」という形でデータベースを構築し、構造化されたデータを蓄積・管理します。Excelのシートとは異なり、データの一貫性や整合性を保ちやすい設計です。
コミュニケーション機能 : データ(レコード)ごとにコメントを残したり、関係者に通知を送ったりする機能があり、業務に紐づいた円滑なコミュニケーションを促進します 。レコードとは顧客管理アプリの場合、顧客名、電話番号、メールアドレス、住所などを一括りにしたデータのことです。
ワークフロー(プロセス管理) : 申請・承認といった業務プロセスを簡単に設定でき、業務の流れを電子化・自動化できます 。
アクセス権管理 : アプリ単位、レコード単位、さらには個々の項目(フィールド)単位で、誰が閲覧・編集・削除できるかといった詳細なアクセス権を設定できます。これにより、セキュリティを担保しつつ、必要な情報を必要な人にだけ共有できます。
Excelでの管理に限界を感じ、「脱Excel」を目指す企業にとって、kintoneは非常に有効な選択肢となります。特に、複数人でのデータ入力・共有、進捗管理、承認業務などが発生する場合には、kintoneのメリットが大きく活かされます。
表1: kintoneとExcelの主な違い
比較項目 kintone Excel 主な用途 業務システム構築、チームでのデータ共有・管理 個人での表計算、データ整理、簡単なリスト作成 データ共有・同時編集 ◎ リアルタイム共有・同時編集可能 △ ファイル共有や設定が必要、競合しやすい データベース機能 ○ アプリとして構造化されたDBを構築 △ シート単位の表形式、リレーショナルDB機能は限定的 ワークフロー(プロセス管理) ◎ 標準機能で設定可能 × 基本的には不可(VBA等で複雑なプログラミング開発が必要) アクセス権管理 ◎ アプリ・レコード・項目単位で詳細設定可 △ ファイル単位、シート保護程度 通知機能 ◎ 条件に応じた通知、リマインダー機能あり × 基本的にはなし モバイル対応 ◎ 専用アプリあり、ブラウザ対応 △ 閲覧・簡易編集は可能だが操作性に難あり データ量 △ 大量データ処理は工夫が必要、容量制限あり △ 大量データで動作が重くなる 外部連携 ◎ API、プラグインで多様な連携が可能 △ 限定的
kintoneと基幹システム(ERPなど)との違い
次に、販売管理、会計管理、生産管理といった企業の根幹業務を支える「基幹システム(ERPなど)」とkintoneの違いです。基幹システムは、多くの場合、特定の業務領域に特化して設計された大規模なパッケージシステムであるか、専門的な知識を持つエンジニアによって時間とコストをかけて開発されたものです。これらのシステムは安定性や網羅性が高い反面、導入後のカスタマイズが難しかったり、現場の細かなニーズやビジネスの変化に迅速に対応することが難しい場合があります。
kintoneは、このような基幹システムではカバーしきれない、あるいは対応に時間がかかる現場の業務課題や、変化の速い業務に対して、柔軟かつスピーディーに対応できる点が大きな違いです。例えば、基幹システムから出力されたデータを元に、営業部門独自の分析レポートを作成するアプリや、特定のプロジェクトの進捗を管理するアプリなどを、現場主導で素早く作成できます。
kintoneを基幹システムそのものとして利用するケースもありますが、多くの場合は、既存の基幹システムと連携し、その周辺業務を補完・効率化する「業務システム」や「サブシステム」として活用されます。例えば、基幹システムの顧客マスタとkintoneの案件管理アプリを連携させたり、kintoneで入力された経費申請データを会計システムに連携させたりといった活用方法があります。
このように、kintoneはExcelの手軽さと基幹システムの堅牢性の間に位置し、両者の「すき間」を埋める役割を担います。また、レガシーな基幹システムに手を加えることなく、必要なデータを引き出して現代的なインターフェースで活用・共有としても機能します。これにより、企業は既存のIT資産を活かしつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を段階的に推進していくことが可能になります。kintoneの導入は、既存システムとの連携を考慮しながら、まずは一つずつ業務をクラウド化し、周辺業務を徐々にDXすることが可能です。
2: kintoneの主な機能とできること
kintone(キントーン)が多機能なクラウドサービスであることは理解できても、「具体的にどんな機能があって、それを使って何ができるの?」という疑問は尽きないでしょう。ここからは、kintoneが持つ主な機能と、それらを活用することで実現できる業務改善について、より詳しく掘り下げていきます。kintoneアプリでできること・できないことの範囲から、業務効率化を支える具体的な機能、そしてデータベースやファイル管理、グラフ作成といった充実した機能群、さらには自動化を支援する仕組みまで、幅広く解説します。
2-1: kintoneアプリでできること・できないこと
Kintoneって結局何ができるの? キントーンの何がそんなにいいの?
この質問に答えるためには、まずkintone(キントーン)の中核である「アプリ」で何が可能になるのかを理解することが重要です。kintoneのアプリ は、単なるデータ入力の箱ではなく、業務そのものをシステム化するための土台となります。
kintoneアプリで可能なこと:
多種多様な業務アプリの作成 : 顧客情報や案件の進捗を管理するアプリ、日報や議事録を共有するアプリ、タスクの進捗を追跡するアプリ、問い合わせ内容や対応履歴を記録するアプリ、さらには経費申請や有給申請といったワークフローを管理するアプリまで、企業内のあらゆる業務に合わせて、プログラミングの知識なしにカスタムアプリを作成できます。これにより、紙やExcelで行っていた煩雑な管理業務を大幅に効率化できます。
データの一元管理とリアルタイム共有 : 作成したアプリに入力されたデータはクラウド上に一元的に蓄積され、権限を持つメンバー間でリアルタイムに共有されます。これにより、情報がサイロ化(孤立化)するのを防ぎ、常に最新の情報を元に業務を進めることができます。
業務プロセスの標準化と見える化 : ワークフロー機能(プロセス管理)を活用することで、申請から承認までの一連の業務プロセスをkintone上で標準化し、誰がどの段階の作業を担当しているのか、進捗状況はどうなっているのかを「見える化」できます。
コミュニケーションの活性化 : 各データ(レコード)に対してコメントを付けたり、関連するメンバーにメンション(通知)を送ったりできるため、データに基づいた具体的なコミュニケーションが可能です 3 。また、「スペース」というチームごとの情報共有の場を設けることもでき、部門内やプロジェクトチームでの連携を強化します。
場所を選ばないアクセス : クラウドサービスであるため、PCはもちろん、スマートフォンやタブレットからも専用アプリやブラウザ経由でアクセス可能です。これにより、外出先やテレワーク中でも業務を進めることができます。
外部サービスとの連携による機能拡張 : kintone単体ではカバーしきれない高度な機能や、既に利用している他の外部システムとのデータ連携も、APIやプラグインを活用することで実現できます 3 。
kintoneアプリでできないこと・不得意なこと(標準機能の限界):
kintoneは非常に柔軟で多機能なツールですが、万能ではありません。標準機能だけでは対応が難しい、あるいは不得意とする領域も存在します。
一度の大量データ処理 : 数万件を超えるような大量のデータを一括で検索したり、更新したりする処理は、実行に時間がかかったり、工夫が必要になる場合があります。例えば、標準機能では一覧画面に表示できるレコード数は100件までといった制限もあります。
ストレージ容量の制限 : 基本的に1ユーザーあたり5GBのディスク容量が付与され、組織全体では「契約ユーザー数 × 5GB」が利用可能な総容量となります。画像や動画などの大容量ファイルを大量に扱う場合は、容量が不足する可能性があり、その場合は有料でディスク増設を行うか、外部ストレージとの連携を検討する必要があります。
複数アプリ間での複雑なデータ集計・リアルタイム同期 : kintoneには「ルックアップ」や「関連レコード一覧」といったアプリ間のデータを関連付ける機能がありますが、複数のアプリにまたがる非常に複雑な集計や、双方向でのリアルタイムなデータ同期(API連携)を標準機能だけで実現するのは難しい場合があります。このような場合は、プラグインの導入やJavaScriptによるカスタマイズが必要になることが多いです。
専門性の高い基幹システムの完全な置き換え : POSレジシステムのようなリアルタイム性が極めて重要な販売時点情報管理システムや、指紋認証などの生体認証と連動した高度な勤怠管理システムなど、特定の業種や業務に特化した専門性の高い基幹システムの全ての機能をkintoneだけで完全に置き換えるのは困難です。これらのシステムとは、データ連携によって補完し合う関係を築くのが現実的です。
非常に複雑なロジックや特殊なUIを要する機能の実装 : 業務ロジックが極めて複雑であったり、ユーザーインターフェース(UI)に特殊なデザインや操作性が求められたりする場合、標準機能や簡単なカスタマイズだけでは対応しきれないことがあります。
kintoneの「できること」を最大限に活かし、「できないこと」や「不得意なこと」を理解した上で、プラグインや外部連携、あるいは他の専門システムとの使い分けを検討することが、kintone導入を成功させる鍵となります。多くの企業が直面する業務課題の大部分はkintoneで解決できる可能性を秘めていますが、万能ではないという認識を持ち、自社のニーズに合わせて最適な活用方法を見極めることが重要です。
2-2: 業務効率化を実現する機能一覧
kintone(キントーン)が業務効率化に貢献できる理由は、その多岐にわたる機能群にあります。これらの機能を組み合わせることで、日々の煩雑な作業を削減し、より生産的な活動に時間を割くことが可能になります。ここでは、特に業務効率化を実現する上で中心となるkintoneの主な機能を一覧でご紹介します。
表2: kintoneの主な機能一覧
機能カテゴリ 主な機能内容 期待される効果 アプリ作成 ドラッグ&ドロップによるノーコード開発、Excel/CSVからの作成、豊富なサンプルアプリ(テンプレート)の活用 業務に合わせたシステムを迅速に構築、IT部門への依存軽減、現場主導の改善促進 データベース データ蓄積、高度な検索・絞り込み機能、リッチなフィールドタイプ、ルックアップ、関連レコード一覧によるデータ連携 情報の一元管理、データ活用の促進、入力負荷軽減、データの整合性向上 プロセス管理 ワークフロー(申請・承認フロー)設定、ステータス管理、担当者割り当て、条件分岐、リマインダー通知 業務プロセスの標準化・自動化、承認時間の短縮、進捗の見える化、対応漏れの防止 コミュニケーション スペース(チーム用掲示板)、スレッド、レコードへのコメント、メンション(通知)、個人メッセージ チーム内・関係者間の連携強化、情報伝達の円滑化、データに基づいた議論の促進 集計・レポート 各種グラフ(棒、折れ線、円グラフ等)の簡単作成、クロス集計表、ダッシュボードとしてのポータル設定 データの可視化による状況把握の迅速化、リアルタイムな分析、効果的な意思決定支援 アクセス権管理 アプリ単位、レコード単位、フィールド単位での詳細な権限設定(ユーザー/組織/グループ単位で制御可能) セキュアな情報共有の実現、内部統制の強化、必要な情報への適切なアクセス制御 通知機能 レコードの作成・更新時、コメント追加時、自分宛メンション時、期日接近時などの条件に応じた通知(kintone内、メール、スマホアプリ) 確認漏れ・対応遅延の防止、タスク実行の促進、関係者への迅速な情報伝達 ファイル管理 アプリのレコード(データ)へのファイル添付機能、資料や画像の紐づけ管理 関連資料の一元管理、ペーパーレス化の推進、情報検索性の向上 外部連携・拡張性 API(REST API, JavaScript API)の提供、プラグインによる機能追加、JavaScript/CSSによるカスタマイズ、Webhook 他システムとのデータ連携、標準機能以上の機能拡張、自社業務への高度な対応
これらの機能は、単独で使われるだけでなく、互いに連携し合うことで、より大きな業務効率化の効果を生み出します。例えば、アプリ作成機能で案件管理アプリを作成し、プロセス管理機能で営業フローを定義、通知機能で担当者にタスクを知らせ、集計・レポート機能で売上状況を可視化するといった一連の流れをkintone上で完結できます。これにより、個々の作業が効率化されるだけでなく、業務全体の流れがスムーズになり、生産性の向上に繋がります。kintoneの導入は、これらの機能をいかに自社の業務に合わせて活用するかがポイントとなります。
2-3: データベース・ファイル管理・グラフなどの充実機能
kintone(キントーン)の業務効率化を支える基盤として、特に重要なのがデータベース機能、ファイル管理機能、そしてグラフ作成機能です。これらの機能が充実していることで、情報の整理・活用が格段に進み、日々の業務がスムーズになります。
データベース機能の充実
kintoneの核心は、プログラミングの知識がなくても誰でも簡単にカスタムデータベース(=アプリ)を作成できる点にあります。
ノーコードでの構築 : 1つのアプリが1つのデータベースとして機能し、必要な項目(フィールド)をドラッグ&ドロップで配置するだけで、自社の業務に特化したデータベースを構築できます。文字列、数値、日付、添付ファイル、計算式、ドロップダウンリストなど、28種類以上の豊富なフィールドタイプが用意されており、柔軟なデータ管理が可能です。
Excel/CSVからの移行 : 既にExcelやCSVファイルで管理しているデータも、kintoneに読み込むだけで簡単にWebデータベース化できます 4 。これにより、既存の資料を有効活用しつつ、より高度なデータ管理へとステップアップできます。
データ連携機能 :
ルックアップ : 他のアプリに登録されている情報を参照・取得し、自動で入力することができます。例えば、顧客マスターアプリから会社名や住所を案件管理アプリに引用するといった使い方です。これにより、入力の手間が省け、入力ミスや表記の揺れを防ぎ、データの整合性を高めることができます。ただし、標準機能では参照先のデータが更新されても、ルックアップ元のデータは手動で更新する必要がある点には注意が必要です。
関連レコード一覧 : あるレコードに関連する他のアプリの情報を一覧で表示する機能です。例えば、顧客情報アプリのレコード詳細画面に、その顧客に関連する案件履歴や問い合わせ履歴を一覧表示させることができます。
ファイル管理機能の便利さ
kintoneでは、業務データと関連付けてファイルを一元的に管理できます。
レコードへのファイル添付 : 各アプリのレコード(個々のデータ)に、Word、Excel、PDF、画像といった様々な種類のファイルを直接添付して保存できます。これにより、案件に関する見積書や契約書、製品に関する仕様書や画像などを、関連データと共に管理できます。
検索性 : ファイル名だけでなく、ファイルの内容に含まれるテキストも検索対象となる場合があり、目的の資料を迅速に見つけ出すのに役立ちます。
変更履歴の保存 : ファイルの更新履歴や変更履歴が記録されるため、いつ誰がどのような変更を加えたのかを追跡でき、誤操作からの復旧や内部統制にも役立ちます。
容量 : kintoneのディスク容量は、基本プランで1ユーザーあたり5GB、組織全体では「契約ユーザー数 × 5GB」となります。大容量のファイルを多数扱う場合は、容量上限に注意が必要です。その際は、ディスク増設オプションを検討するか、DropboxやGoogle Driveといった外部のクラウドストレージサービスと連携し、kintoneにはファイルへのリンク情報のみを保存するといった運用も有効です。
グラフ機能によるデータの可視化
kintoneに蓄積されたデータは、専門的な分析ツールを使うことなく、簡単にグラフ化して可視化することができます 9 。
多様なグラフ種類 : 縦棒グラフ、横棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、クロス集計表など、目的に応じた様々な形式のグラフを作成できます。
リアルタイム集計 : アプリに新しいデータが入力されたり、既存のデータが更新されたりすると、グラフもリアルタイム(または定期的に)に更新されます。これにより、Excelなどで都度集計し直す手間がなく、常に最新の状況を把握できます。
簡単操作 : グラフの作成や設定変更も直感的な操作で行えます。集計したい項目(大項目、中項目、小項目)や集計方法(合計、平均、件数など)、絞り込み条件、並び順などを柔軟に設定し、深掘り分析を行うことも可能です。
これらのデータベース、ファイル管理、グラフ機能が一体となって提供されることで、kintoneは単なるデータ入力ツールではなく、情報活用を促進し、業務改善を力強く支援するプラットフォームとしての価値を高めています。構造化されたデータ管理と、文脈に紐づいたファイル管理、そして直感的なデータ可視化は、あらゆる業種・業務において、より効率的で質の高い意思決定をサポートします。
2-4: 自動化・RPA・通知機能で作業を削減
kintone(キントーン)は、日々の定型的な作業や確認作業を削減し、より創造的な業務に集中するための自動化機能や通知機能を備えています。これらを活用することで、人的ミスを減らし、業務のスピードアップを図ることが可能です。
プロセス管理による業務フローの自動化
kintoneの「プロセス管理」機能(ワークフロー機能)は、申請・承認といった一連の業務の流れを電子化し、一部自動化することができます。
ステータス管理と担当者割り当ての自動化 : 例えば、経費申請アプリで「申請」ステータスのレコードが作成されると、自動的に上長に「承認依頼」のタスクが割り当てられ、通知が送られます。上長が「承認」すると、次の経理担当者に「処理依頼」が自動的に回るといった流れを構築できます。これにより、誰が次に何をすべきかが明確になり、業務の停滞を防ぎます。
条件分岐 : 申請金額や内容に応じて、承認ルートを自動で分岐させることも可能です。例えば、一定金額以上の申請は部長承認まで必要とする、といった複雑なフローにも対応できます。
通知機能による確認・催促作業の削減
kintoneの通知機能は、必要な情報を適切なタイミングで関係者に知らせることで、確認漏れや対応遅れを防ぎ、コミュニケーションコストを削減します。
リアルタイム通知 : レコード(データ)が新しく作成されたり、内容が更新されたり、コメントが追加されたり、自分宛にメンションが送られたりすると、kintoneの画面上やメール、スマートフォンのプッシュ通知でリアルタイムにお知らせが届きます。これにより、重要な変更や依頼を見逃すことなく、迅速に対応できます。
リマインダー通知 : レコード内の日付フィールド(例:納期、契約更新日、タスクの締切日など)を基準として、事前に設定したタイミング(例:3日前、当日、1日後など)で自動的にリマインド通知を送ることができます。これにより、手動での期限管理や催促作業の手間を大幅に削減し、タスクの遅延や失念を防ぎます。
レコードの条件通知 : レコードが特定の条件を満たした際に、指定したユーザーや組織に通知を送る機能です。例えば、「案件のステータスが『受注』になったら営業部長に通知する」「問い合わせの対応状況が『完了』になったら顧客担当者に通知する」といった設定が可能です。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との連携可能性
kintone自体はRPA(Robotic Process Automation)ツールではありませんが、そのAPI(Application Programming Interface)やWebhook機能、さらには専用の連携プラグインを活用することで、RPAツールと効果的に連携し、より広範な業務自動化を実現できます。
定型的なデータ入力・転記の自動化 : 例えば、外部システムからダウンロードしたExcelファイルの情報をRPAが読み取り、kintoneの該当アプリに自動で入力・更新するといった作業を自動化できます。
システム間連携の自動化 : kintoneで特定の条件が満たされた(例:新しい受注データが登録された)ことをトリガーとしてRPAを起動し、RPAが基幹システムへのデータ登録や関連部署へのメール通知といった一連の処理を自動で行う、といった連携が可能です。
kintoneの自動化・通知機能は、ユーザーが常にシステムを監視していなくても、業務がスムーズに流れ、必要なアクションが適切なタイミングで促される「プロアクティブなワークフロー管理(業務の進捗を能動的に把握し、問題が発生する前に対応する仕組み)」です。また、RPAなどの外部自動化ツールと連携することで、kintoneは複数のシステムをまたがる複雑な業務プロセス全体の自動化における「司令塔」のような役割を担うこともでき、大幅な作業削減と生産性向上が期待されています。これらの機能を活用するには、まず自社の業務プロセスを整理し、どこを自動化できるか、どのような通知が必要かを見極めることが重要です。
3: kintoneの使い方をやさしく解説
kintone(キントーン)の魅力は、その多機能性だけでなく、専門的なIT知識がない人でも比較的簡単に使い始められる点にあります。ここからでは、kintoneの基本的な使い方について、初心者の方にもわかりやすく解説します。最初のアプリ作成から、日々のデータ入力・共有、アクセス管理、そしてチームでの具体的な活用イメージまで、ステップを追って見ていきましょう。
3-1: はじめてのアプリ作成手順(ドラッグ&ドロップで簡単設計)
kintone(キントーン)を使い始める第一歩は、「アプリ」の作成です。ここでは、最も基本的な「はじめから作成」する方法を中心に、ドラッグ&ドロップによる簡単なアプリ設計の手順を解説します。
アプリ作成画面へのアクセス:kintoneにログインすると表示されるポータル画面(トップページ)の「アプリ」エリアにある「+」マークのアイコン(「アプリを作成する」と表示されることもあります)をクリックします。
アプリ作成方法の選択:クリックすると、いくつかのアプリ作成方法が提示されます。
はじめから作成 : 何もない状態から自由にアプリを設計します。
サンプルアプリを追加する : 業種別・業務別に用意された100種類以上のテンプレートから選び、必要に応じてカスタマイズします。
Excel/CSVを読み込んで作成 : 既存のExcelファイルやCSVファイルをアップロードし、そのデータと構造を元にアプリを自動生成します。
登録済みのテンプレートからアプリを作成する : 自社で作成・登録したテンプレートを利用します。
ほかのアプリを再利用して新しく作成する(アプリのコピー) : 既存のアプリをコピーして、新しいアプリのベースにします。 今回は「はじめから作成」を選びます。
アプリ名の設定:新しいアプリのフォーム設定画面が表示されたら、まず「アプリ名」を入力します。例えば、「日報アプリ」「顧客リスト」「案件管理」など、アプリの内容がわかる名前を付けましょう。アプリアイコンも後から変更可能です。
フィールドの配置(ドラッグ&ドロップ):画面左側には、「文字列(1行)」「数値」「日付」「添付ファイル」「ラジオボタン」「チェックボックス」といった様々な種類の「フィールド」(データ入力項目)が一覧で表示されています。ここから必要なフィールドを選び、右側のフォームエリア(アプリの入力画面になる部分)にドラッグ&ドロップで配置していきます。例えば、日報アプリなら「日付」フィールド、「作成者」フィールド(自動でログインユーザー名が入るように設定可能)、「今日やったこと」を入力するための「文字列(複数行)」フィールドなどを配置します。
フィールドの設定:配置した各フィールドには、より詳細な設定を行うことができます。フィールドにマウスカーソルを合わせると表示される歯車マーク(設定アイコン)をクリックします。
フィールド名 : 各入力項目の見出しとなる名前を設定します(例:「報告日」「担当者名」「業務内容」)。
オプション設定 : フィールドタイプによっては、必須入力にするか、初期値を設定するか、選択肢の内容を編集するなどの設定が可能です。例えば、「リンク」フィールドで「入力値の種類」を「メールアドレス」に設定すると、入力されたメールアドレスをクリックした際にメーラーが起動するようになります。
フィールドの調整:配置したフィールドは、ドラッグ&ドロップで位置を自由に変更したり、横幅や縦幅を調整したりできます。また、不要なフィールドは削除したり、同じタイプのフィールドを複製して追加したりすることも簡単です。
フォームの保存とアプリの公開:フォームの設計が一通り完了したら、画面左上(または右上)にある「フォームを保存」ボタンをクリックします。この時点ではまだアプリは他の人には見えません。最終的に「アプリを公開」ボタンをクリックすると、作成したアプリが利用可能な状態になります。公開後も、設定画面からいつでもフォームの修正や機能の追加が可能です。
このように、kintoneのアプリ作成は、プログラミングの専門知識がなくても、直感的な操作で進めることができます。この「ドラッグ&ドロップで簡単設計」という手軽さが、現場の担当者が自ら業務改善のアイデアを形にすることを可能にし、デジタルトランスフォーメーション(DX)への第一歩を踏み出しやすくしています。まずは簡単なアプリから作成し、使いながら改善していくという進め方がおすすめです。既存のExcel資料を元にアプリを作成する機能も、データ移行の手間を省き、迅速なシステム導入を支援します。
3-2: データ入力・共有・アクセス管理の基本操作
kintone(キントーン)でアプリを作成したら、次はそのアプリを使って実際にデータを入力し、チームで共有し、そして適切に情報を管理していくことになります。ここでは、これらの基本的な操作方法について解説します。
データ入力の基本
フォームへの入力 : 作成したアプリを開くと、設計したフォーム(入力画面)が表示されます。各フィールド(項目)に、指示に従ってデータを入力していきます。例えば、テキストフィールドには文字を、数値フィールドには数字を、日付フィールドではカレンダーから日付を選択します。ファイル添付フィールドには、PCからファイルを選んでアップロードします。
一括登録・更新 : 既存のExcelファイルやCSVファイルにまとめられた大量のデータを、一度にkintoneアプリに登録(インポート)したり、既存のレコードをまとめて更新したりすることも可能です。これにより、データ移行作業の負担を大幅に軽減できます。
データ共有の仕組み
kintoneの大きなメリットの一つは、入力されたデータがリアルタイムに関係者間で共有されることです 3 。
アプリ内での共有 : アプリにアクセス権を持つユーザーは、登録されたレコードを閲覧したり、条件で絞り込んだり、並べ替えたりすることができます。
スペース機能 : 特定のプロジェクトチームや部署単位で「スペース」という専用の場所を作成できます。スペース内では、関連するアプリをまとめて表示したり、掲示板のように情報を発信したり、メンバー間でディスカッション(スレッド形式)を行ったり、ファイルを共有したりできます。
ゲストスペース : 必要に応じて、社外の取引先や協力会社の担当者を「ゲストユーザー」として特定の「ゲストスペース」に招待し、限定された情報(アプリやスレッド)のみを共有することができます。これにより、プロジェクト単位での社内外連携がスムーズになります。
コメント機能 : 各レコード(個々のデータ)には、コメントを書き込む機能があります。例えば、案件管理アプリのある案件レコードに対して、営業担当者が進捗状況をコメントで報告し、上司がそれに対して指示やアドバイスを返す、といった使い方ができます。宛先を指定してメンション(通知)を送ることも可能です。
通知機能 : データが更新されたり、自分宛のコメントが付いたりすると、kintoneの画面上やメール、スマートフォンアプリへのプッシュ通知で知らされます。これにより、重要な情報を見逃さず、迅速な対応が可能になります。
チームメンバーの招待 : kintoneの利用を開始する際や、新しいメンバーが加わった際には、管理者がメンバーを招待(ユーザー登録)することで、kintone環境へのアクセスが可能になります。
アクセス管理の基本
kintoneでは、誰がどの情報にどこまでアクセスできるかを細かく制御する「アクセス権管理」機能が充実しています。これにより、情報の機密性を保ちつつ、必要な情報を必要な人にだけ安全に共有することが可能です。
設定レベル : アクセス権は、以下の3つのレベルで設定できます。
アプリ単位 : アプリそのものに対して、誰が利用(閲覧、レコード追加、編集、削除、管理)できるかを設定します。
レコード単位 : アプリ内の個々のレコード(データ行)に対して、特定の条件(例:作成者が自分である、ステータスが「承認済み」であるなど)を満たすレコードについて、誰が閲覧・編集・削除できるかを設定します。
フィールド単位 : レコード内の特定の項目(フィールド)に対して、誰が閲覧・編集できるかを設定します。例えば、「給与」フィールドは人事部員以外には見せない、といった制御が可能です。
設定対象 : アクセス権は、個々の「ユーザー」だけでなく、「組織(部署など)」や、任意に作成できる「グループ」単位で割り当てることができます。メンバーの異動があった場合でも、組織やグループの設定を変更するだけで済むため、管理が容易です。
許可する操作 : 各設定対象に対して、「閲覧」「追加」「編集」「削除」「管理」といった操作権限を細かく許可または不許可に設定できます。
これらのデータ入力、共有、アクセス管理の基本操作を理解し、適切に設定・運用することで、kintoneは単なるデータ置き場ではなく、組織の情報を活性化させ、安全かつ効率的なコラボレーションを実現するプラットフォームとなります。特にアクセス権の設定は、情報セキュリティの観点からも非常に重要であり、導入初期にしっかりとルールを定めておくことが推奨されます。
3-3: 部門・チームでの活用ケースと運用ポイント
kintone(キントーン)は、その柔軟性の高さから、特定の部門やチームだけでなく、全社的な情報基盤としても活用できます。ここでは、具体的な部門・チームでの活用ケースと、kintoneを効果的に運用していくためのポイントをご紹介します。
部門・チームでの主な活用ケース
kintoneは、様々な部門の特有な業務に対応するアプリを作成し、業務効率化や情報共有の改善に貢献します 2 。
営業部門 :
顧客管理(CRM)アプリ : 顧客の基本情報、対応履歴、過去の取引実績などを一元管理。
案件管理(SFA)アプリ : 商談の進捗状況、確度、予定金額、活動履歴などを記録・共有。
見積書作成・管理アプリ : 見積書の作成、承認フロー、発行履歴を管理。
日報アプリ : 営業活動の報告、情報共有。
コールリスト管理アプリ : 架電対象のリストをチームで共有・管理。
バックオフィス部門(総務・人事・経理など) :
社員名簿アプリ : 社員情報を一元管理。
採用管理アプリ : 応募者情報、選考進捗、面接評価などを管理。
契約書管理アプリ : 契約書の詳細情報、契約期間、関連ファイルなどを管理し、更新時期のリマインドも可能。
経費申請アプリ : 交通費や物品購入などの経費申請と承認フローを電子化。
勤怠管理アプリ : 出退勤記録、休暇申請などを管理(専門の勤怠システムとの連携も有効)。
社内FAQアプリ : よくある質問とその回答をまとめ、問い合わせ対応の工数を削減。
マーケティング部門 :
イベント管理アプリ : セミナーや展示会の企画、集客状況、参加者情報などを管理。
制作物進捗管理アプリ : Webサイトコンテンツや販促資料などの制作物の進捗状況、担当者、納期を管理。
タスク管理アプリ : マーケティング施策ごとのタスク、担当者、期限を管理。
システム部門 :
IT資産管理アプリ : PCやソフトウェアライセンスなどのIT資産情報を管理。
問い合わせ管理(ヘルプデスク)アプリ : 社内からのIT関連の問い合わせ内容、対応状況、解決策を記録・共有。
全社利用 :
社内ポータル : お知らせ、各種申請へのリンク、共有ドキュメントなどを集約したポータルサイトを構築。
稟議・申請ワークフロー : 様々な社内申請(押印申請、出張申請など)を電子化。
文書管理アプリ : 規程集、マニュアル、議事録などの社内文書をバージョン管理も含めて一元的に保管・共有。
ナレッジ共有アプリ : 各自の持つノウハウや成功事例などを蓄積・共有し、組織全体の知識レベルを向上。
社外との連携 :
プロジェクト共同管理 : ゲストスペース機能を活用し、外部の協力会社や顧客と特定のプロジェクト情報を共有し、共同で作業を進める。
ファイル共有 : 特定の資料を安全に社外関係者と共有。
kintone運用のポイント
kintoneを導入して効果を最大限に引き出すためには、いくつかの運用上のポイントを押さえておくことが重要です。
導入目的の明確化と共有 : 「何のためにkintoneを導入するのか」「どのような課題を解決したいのか」という目的を明確にし、関係者全員で共有することが最も重要です。目的が曖昧なままでは、アプリが乱立したり、使われない機能が出てきたりする原因となります。
スモールスタートと段階的な拡大 : 最初から全ての業務をkintone化しようとせず、まずは特定の部門や業務、あるいは課題の大きいところから小さく始めて、成功体験を積み重ねながら徐々に利用範囲を広げていくアプローチが効果的です。
現場担当者の積極的な巻き込み : アプリの設計や改善プロセスには、実際にその業務を行う現場の担当者の意見を積極的に取り入れましょう。現場のニーズに合わないシステムは使われなくなってしまいます。現場担当者が「自分たちのためのシステムだ」と感じられるように、一緒に作り上げていく姿勢が大切です。
運用ルールの策定と周知徹底 :
アプリ作成ルール : 誰がアプリを作成できるのか、アプリの命名規則、本番用アプリとテスト用アプリの区別などを定めます。
データ管理ルール : 個人情報や機密情報の取り扱い、データの入力ルール(表記統一など)を明確にします。
スペース利用ルール : スペースの作成基準や参加メンバーの範囲などを定めます。
定期的な棚卸し : 不要になったアプリや古くなった情報を定期的に整理し、システム全体の健全性を保ちます。 これらのルールは、自由な活用を妨げるものではなく、無秩序な状態を防ぎ、kintoneの価値を持続させるために必要です。
推進担当者の設置と役割分担 : kintoneの導入・運用をリードする推進担当者(できれば複数名)を任命し、アプリ作成支援、運用ルールの管理、利用者への教育・サポートといった役割を分担すると、スムーズな展開が期待できます。
教育・サポート体制の整備 : 利用者向けの操作説明会や勉強会を定期的に開催したり、気軽に質問できる相談窓口を設けたりするなど、利用者が安心してkintoneを使える環境を整えることが、定着には不可欠です。
ダブルスタンダードを避ける : 「kintoneが使えない人は従来のExcelや紙でも良い」といった例外を認めてしまうと、kintoneへの移行が進まず、二重管理が発生し形骸化する恐れがあります。可能な限りkintoneでの運用に統一する方針を明確にしましょう。
これらのポイントを意識し、自社の状況に合わせて運用体制を構築していくことで、kintoneは部門やチームの壁を越えた強力な業務改善プラットフォームとして機能するでしょう。特に、一つの部門での成功事例は、他の部門への展開を促す「起爆剤」となります。全社導入を目指し業務の効率化を図りましょう。
4: kintone活用事例と具体的な効果
kintone(キントーン)が実際にどのように企業や組織で活用され、どのような効果を上げているのかを知ることは、自社での導入を検討する上で非常に参考になります。ここからでは、様々な業種・企業におけるkintoneの具体的な活用事例と、それによってもたらされた業務改善や課題解決の効果、さらには人気のプラグインや外部連携を活用した応用例についてご紹介します。
4-1: 業種別・企業別のkintone活用事例
kintone(キントーン)は、その柔軟性とカスタマイズ性の高さから、特定の業種に限定されることなく、多種多様な業界・規模の企業や組織で導入・活用されています。ここでは、代表的な業種別に具体的な企業事例をいくつか見ていきましょう。
製造業
製造業では、生産管理、品質管理、在庫管理、顧客管理、さらには営業支援まで、幅広い業務でkintoneが活用されています。
信幸プロテック株式会社(空調設備工事) : 物件情報管理、受付登録管理、進捗管理、請求管理などをkintoneでシステム化。以前利用していたパッケージシステムのレスポンス悪化とサーバーの限界が導入のきっかけでした。結果として、工事依頼の受付時間が大幅に短縮され、年間で27日分の作業時間削減を達成。さらに、現場の自主的な業務改善が進み、売上1.4倍、利益8倍という目覚ましい成果を上げています。
株式会社アマノ(医療福祉機器開発・製造・販売) : 自社開発していた販売管理、生産管理、顧客管理、勤怠管理システムをkintoneでクラウド上に一元化。これにより、システム間のデータ連携作業がゼロになり、情報のリアルタイム性が向上。テレワークへのスムーズな移行やペーパーレス化も実現しました。
部品卸売業 A社 : 新規ビジネス立ち上げに伴い、販売管理システムと在庫管理システムをkintoneで短期間(最初の相談からわずか2ヶ月)で構築。独自の複雑な粗利配分計算にも対応できる柔軟性が決め手となりました。
その他、日産自動車、一ノ蔵、バンドー化学、ハウス食品中国、ダイドーグループホールディングス、JX金属、三菱重工業、資生堂、アイホンなど、多くの製造業でkintoneが導入され、調達業務の効率化、工程管理の見える化、アフターサービス情報の集約、SFAとしての活用など、様々な課題解決に貢献しています。
小売業・サービス業
店舗運営、在庫管理、顧客情報管理、予約システム、社内コミュニケーションなど、多岐にわたる業務でkintoneが力を発揮しています。
元気でんき株式会社(中古エアコン買取販売・電気設備保守点検) : 顧客データ管理の負担増大と、経営分析のためのグラフ作成の容易さを求めてkintoneを導入。CRM、SFA、コールセンター管理などに活用し、全社員で経営状況をリアルタイムに可視化。社員の経営参画意識の向上にも繋がっています。
株式会社赤福(和菓子製造・販売・店舗運営) : 毎月数量限定で販売する「朔日餅」の予約販売システムにkintoneを活用。手作業で行っていた集計業務の時間を年間200時間削減するという大幅な効率化を達成しました。
株式会社東急百貨店 : 外商事業部におけるアナログな顧客情報管理をデジタル化するためにkintoneを導入。
株式会社ZOZO : モバイル非対応だった業務や紙ベースで残っていた業務の改善、各種申請・承認フローの迅速化のためにkintoneを導入。スマートフォン対応とカスタマイズ性が決め手となりました 。
その他、スーパーマーケット「エブリイ」では本部・店舗間・取引先との情報共有基盤として、インテリア・雑貨「バルス(Francfranc)」では発注残管理の属人化解消のためにkintoneが活用されています 48 。
情報通信業(IT業種)
プロジェクト管理、営業支援(SFA)、顧客管理(CRM)、見積もり作成、社内業務プロセスの効率化などにkintoneが広く利用されています。
NECネッツエスアイ株式会社 : kintoneで構築した見積依頼フローにより、年間2880時間もの工数削減を実現 。
株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA) : グローバルに統一されたビジネスプロセス管理基盤としてkintoneを活用し、業務スピードを向上。
リーグル株式会社 : Salesforceからの置き換えでランニングコストを1/10に圧縮し、さらに営業支援のためのkintone活用で年間400時間の作業時間削減を達成。
その他、ISID-AO、ネオラボ、ジュピターテレコム、横河レンタ・リース、サイバーエージェント、AmidA、エス・エム・エス、産経新聞社、USEN-NEXT HOLDINGS、ソフトバンク、神戸デジタル・ラボ、トヨクモ、NDIソリューションズ、朝日新聞社など、多数の情報通信企業で、Notesからの移行、基幹システムとの連携、新規事業のサポート、ペーパーレス化、契約業務の効率化などにkintoneが貢献しています。
建設業
工事案件管理、進捗管理、原価管理、日報管理、現場写真の共有、資材管理など、現場とオフィス双方の業務効率化にkintoneが役立っています。
大館桂工業株式会社 : kintoneを活用した事例があります。
多くの建設会社で、kintone導入により工事進捗率の向上、原価管理の入力工数削減、現場からの報告時間短縮、危険予知活動の情報共有速度向上といった効果が報告されています。
医療・介護・福祉
患者情報管理、介護記録、施設予約、職員間の情報共有、各種申請業務の電子化など、質の高いサービス提供と業務負担軽減の両立にkintoneが貢献しています。
合同会社パークヒルズ(介護施設) : 従来手書きとExcelで行っていた介護に必要な情報の記録・入力をkintoneに移行し、業務効率を向上させ、本来のケア業務に時間を割けるようになりました。
医療法人仁友会 北彩都病院 : ワークフローシステム「コラボフロー」とkintoneを連携させ、院内の稟議決裁のデジタル化・標準化と、蓄積された情報の有効活用を実現しました。
その他、介護記録の電子化による記録作成時間の約40%削減、情報共有のリアルタイム化、書類作成時間の約50%削減、職員の残業時間削減などの効果が多くの施設で報告されています。
自治体・公共機関
行政文書のやり取り、各種申請受付・管理、災害情報管理、避難所運営、住民向け情報提供など、多岐にわたる行政サービスと内部業務の効率化・DX推進にkintoneが採用されています。
宮城県庁 : 県と市町村間で行われる行政文書のやり取りを効率化するため、情報共有基盤としてkintoneを導入。メールベースの一方通行のやり取りから脱却し、50を超える団体との効率的な情報共有を実現しました。
神戸市役所 : 全庁的な業務改善ツールとしてkintoneを採用。圧倒的な紙文化だった職場が、kintone導入後わずか3ヶ月で5,000枚以上の紙の日報を廃止するなど、一気に電子化に成功しました。
西海市 : kintoneと生成AIを連携活用し、議会答弁書作成業務の効率化などにより、年間2,000時間超の業務時間削減を達成。
その他、北海道石狩市、愛知県名古屋市、岐阜県土岐市、栃木県真岡市、山形県酒田市、静岡県焼津市など、全国の多くの自治体で、新型コロナワクチン予約システム、補助金申請システム、避難所運営支援、職員のテレワーク管理など、様々な用途でkintoneが活用され、住民サービスの向上と行政運営の効率化に貢献しています。
学校・教育機関
生徒・学生情報管理、教職員間の情報共有、成績管理、行事予定管理、保護者へのお知らせ配信、アンケート実施など、校務の効率化と教育活動の質向上にkintoneが利用されています。
埼玉大学教育学部附属小学校 : 「学校からのお知らせアプリ」で教職員から家庭へ直接お知らせを配信。「学校評価アンケートアプリ」では、保護者がスマートフォンやPCから回答し、回収・集計作業もアプリで対応することで、教職員の作業負担をほぼゼロにしました。
学校法人茂楽学園 大日向小学校・中学校 : 児童・生徒に関する情報を教師が一元管理し、どこでも情報共有できるようにkintoneを活用。チーム単位でのコミュニケーション機能「スペース」も活用し、学校運営を効率化しています。
株式会社学研エデュケーショナル : 個別最適化していた各システムを統合し、kintoneなどを組み合わせて新たな基幹システムを再構築しました。
これらの事例は、kintoneが特定の業種に縛られず、様々な組織の固有の業務課題に柔軟に対応し、具体的な成果を生み出していることを示しています。kintoneの導入は、単なるシステムの置き換えではなく、業務プロセスの見直しや組織文化の変革を促すきっかけともなり得ます。これらの活用事例を参考に、自社の課題解決にkintoneがどのように貢献できるか、具体的なイメージを膨らませてみてください。
4-2: 導入による業務改善・課題解決の具体例
kintone(キントーン)を導入することで、企業や組織は具体的にどのような業務改善を実現し、どのような課題を解決できるのでしょうか。前項の業種別事例でも触れられていますが、ここでは特に効果が顕著に現れるポイントを整理してご紹介します。
1. 大幅な時間削減と業務効率の向上
kintone導入による最も直接的で分かりやすい効果は、日々の業務にかかる時間の削減です。
手作業の自動化・削減 : 従来、手作業で行っていたデータ入力、転記、集計、書類作成といった定型業務をkintoneで自動化・効率化することで、作業時間を大幅に短縮できます。例えば、信幸プロテック株式会社では工事依頼の受付時間が2分30秒から約30秒に短縮され、年間累計で27日分の作業時間削減に繋がりました。株式会社赤福では、手作業での集計時間が年間200時間削減されました。
情報検索の迅速化 : 必要な情報がkintoneに一元管理されることで、ファイルを探し回ったり、関係者に問い合わせたりする時間が不要になります。
会議・報告資料作成の効率化 : リアルタイムにデータが更新・集計されるため、会議や報告のための資料作成にかかる手間と時間を削減できます。
2. コスト削減
業務効率化は、人件費をはじめとする様々なコストの削減にも繋がります。
ペーパーレス化による経費削減 : 紙の帳票や書類を電子化することで、紙代、印刷代、ファイル代、保管スペースにかかるコストを削減できます。株式会社クレーンメンテ広島では、月3,000枚の紙書類が2,000枚へ削減され、経費の大幅な削減に繋がりました。神戸市役所では5,000枚以上の紙の日報が廃止されました。
システム関連コストの削減 : 複数の専用ツールやシステムをkintoneに集約することで、ライセンス費用や保守管理費用を削減できます。リーグル株式会社では、Salesforceからkintoneに置き換えることでランニングコストを1/10に圧縮した事例もあります。
残業代の削減 : 業務効率化により、残業時間が減少し、結果として残業代の削減にも貢献します。信幸プロテック株式会社では時間外労働が22%減少しました。
3. 情報共有の円滑化と業務の見える化
kintoneは、組織内の情報共有を劇的に改善し、業務プロセス全体の透明性を高めます。
リアルタイムな情報共有 : 入力されたデータは即座に共有され、関係者は常に最新の情報を元に業務を進めることができます。これにより、部門間や担当者間の認識のズレを防ぎます。
業務進捗の見える化 : 案件の進捗状況、タスクの担当者と期限、申請の承認状況などがリアルタイムで可視化されるため、業務のボトルネックを発見しやすくなり、遅延防止に繋がります。元気でんき株式会社では、経営状況がリアルタイムで可視化され、社員の経営参画意識向上にも繋がりました。
4. 業務品質の向上とミスの削減
手作業の削減やプロセスの標準化は、業務品質の向上とヒューマンエラーの削減に貢献します。
入力ミス・転記ミスの削減 : ルックアップ機能や自動計算機能、選択式の入力フィールドなどを活用することで、手入力によるミスや、Excelなどへのデータ転記時のミスを防ぎます。ある製造業の事例では、転記ミスがゼロになったと報告されています。
対応漏れ・確認漏れの防止 : 通知機能やリマインダー機能により、タスクの対応漏れや重要な情報の確認漏れを防ぎます。株式会社クレーンメンテ広島では、請求漏れや請求書内容の確認漏れがなくなりました。
業務プロセスの標準化 : ワークフロー機能を活用することで、業務プロセスが標準化され、担当者によるバラつきがなくなり、業務品質が安定します。
5. 働き方改革の推進と従業員満足度の向上
kintoneは、より柔軟で効率的な働き方を実現し、従業員の満足度向上にも繋がります。
テレワーク・リモートワークへの対応 : クラウドベースであるため、場所を選ばずに業務を行え、テレワークへのスムーズな移行を支援します。
自主的な業務改善の促進 : 現場の担当者が自らアプリを作成・改善できる環境は、従業員の当事者意識を高め、ボトムアップでの業務改善活動を活発にします。信幸プロテック株式会社の事例では、パソコン初心者の若手メンバーが自ら名刺管理アプリを改良するなどの動きが見られました。
付加価値の高い業務への集中 : 定型業務や単純作業から解放されることで、従業員はより創造的で付加価値の高い業務に時間とエネルギーを集中できるようになります。
これらの具体例は、kintoneが単なるツールではなく、企業の業務プロセス全体に変革をもたらし、課題解決と持続的な成長を支援するプラットフォームであることを示しています。導入効果は、削減された時間やコストといった定量的な指標だけでなく、従業員のモチベーション向上や組織文化の変革といった定性的な側面にも現れます。kintoneの活用によって、多くの企業がこれらの効果を実感しています。
4-3: 人気プラグイン・外部連携による応用例
kintone(キントーン)の大きな魅力の一つは、標準機能だけでも十分に強力ですが、プラグインの導入や外部サービスとの連携によって、その可能性をさらに大きく広げられる点です。これにより、より専門的な業務ニーズに対応したり、既存のシステムとシームレスに繋いだりすることが可能になります。ここでは、人気のプラグインや代表的な外部連携が、どのようにkintoneの活用の幅を広げているのか、具体的な応用例を見ていきましょう。
人気プラグインの活用による応用例
kintoneには、サイボウズ社自身や多くのパートナー企業から、様々な機能を拡張するためのプラグインが提供されています。これらを導入することで、プログラミングの知識がなくても、kintoneをより便利に、より自社の業務に合わせてカスタマイズできます。
帳票出力プラグイン(例:PrintCreator、RepotoneUシリーズなど) :
応用例 : kintoneで管理している顧客情報や案件情報、商品情報などを元に、見積書、請求書、納品書、作業報告書といった各種帳票を、ExcelやPDF形式で簡単に出力できます。
効果 : 手作業での帳票作成 やデータ転記の手間とミスを大幅に削減し、迅速な書類発行を実現します。
Webフォーム作成プラグイン(例:フォームブリッジ、じぶんフォームなど) :
応用例 : kintoneのアカウントを持っていない社外の人(顧客、取引先、応募者など)でも、Webブラウザ経由でkintoneに直接データを入力できるフォームを作成できます。アンケートフォーム、問い合わせ受付フォーム、イベント申込フォーム、採用応募フォームなどに活用されます。
効果 : データ収集の効率化、入力ミスの削減、外部とのスムーズな情報連携を実現します。自治体の補助金申請システムなどでも活用されています。
カレンダー連携プラグイン(例:KOYOMI、カレンダーPlusなど) :
応用例 : kintone内の日付情報を持つレコード(例:案件の納期、会議の予定、施設の予約状況など)を、月表示、週表示、日表示といった見やすいカレンダー形式で表示・管理できます。
効果 : スケジュール管理の視認性が向上し、予定の重複や漏れを防ぎます。リソース(人、会議室、車両など)別の表示も可能なプラグインもあります。
データ可視化・ダッシュボードプラグイン(例:krewDashboardなど) :
応用例 : 複数のkintoneアプリに散らばるデータを集約し、より高度なグラフやチャート、KPIダッシュボードをリアルタイムに表示します 。経営状況の把握、売上分析、プロジェクト進捗のモニタリングなどに活用されます。
効果 : データに基づいた迅速な意思決定を支援し、ビジネスの状況を多角的に把握できます。
ガントチャートプラグイン(例:KOUTEIなど) :
応用例 : プロジェクト管理アプリや生産管理アプリのタスク情報(開始日、終了日、進捗率、担当者など)を元に、ガントチャートを自動作成し、プロジェクト全体のスケジュールやタスク間の依存関係を視覚的に表示します。
効果 : プロジェクトの進捗状況が一目でわかり、計画と実績の差異把握やリソース調整が容易になります。
一覧画面拡張プラグイン :
応用例 : kintoneの標準の一覧画面ではできない、特定条件での柔軟な絞り込み検索、一覧画面の直接印刷、複数項目の一括編集といった機能を追加します。
効果 : 日常的なデータ参照や操作の利便性を向上させます。
自動採番プラグイン :
応用例 : 新しいレコードを作成する際に、顧客ID、案件番号、申請番号などをルールに基づいて自動的に採番し、重複しないユニークな番号を付与します。
効果 : 手作業による番号付けの手間とミスを防ぎ、データの一貫性を保ちます。
外部サービス連携による応用例
kintoneはAPIを公開しており、様々な外部クラウドサービスや社内システムとデータ連携することが可能です。これにより、kintoneを中心としたより広範な業務自動化や情報活用が実現します。
会計ソフト連携(例:freee会計、マネーフォワード クラウド会計、PCA会計など) :
応用例 : kintoneで管理している売上データや経費申請データを会計ソフトに自動で取り込み、仕訳作業を効率化します。
効果 : 経理業務の負担軽減、月次決算の早期化、データの二重入力防止に繋がります。
コミュニケーションツール連携(例:Slack、LINE WORKS、Microsoft Teamsなど) :
応用例 : kintoneでのレコード更新や特定条件の発生(例:重要案件のステータス変更)をSlackなどのチャットツールにリアルタイムで通知したり、逆にチャットツールからkintoneの情報を参照・更新したりできるようにします。
効果 : 情報伝達のスピードと確実性が向上し、チーム内のコミュニケーションが活性化します。
クラウドストレージ連携(例:Dropbox、Google Drive、Boxなど) :
応用例 : 設計図面や動画、高解像度画像といった大容量のファイルは外部のクラウドストレージに保存し、kintoneのレコードにはそのファイルへのリンク情報のみを保持します。
効果 : kintoneのディスク容量を効率的に使用しつつ、大容量ファイルも業務データと紐付けて管理できます。
MA(マーケティングオートメーション)ツール連携(例:Marketo Engageなど) :
応用例 : kintoneで管理している顧客リストやリード情報をMAツールと同期させ、メールマーケティングやリードナーチャリング活動を強化します。
効果 : マーケティング施策のパーソナライズと自動化を促進し、見込み客の育成効率を高めます。
電子契約サービス連携(例:クラウドサインなど) :
応用例 : kintoneで作成した見積書や契約書データを電子契約サービスに連携し、契約締結プロセス全体をオンラインで完結させます。
効果 : 契約業務のスピードアップ、印紙代や郵送コストの削減、コンプライアンス強化に繋がります。
カレンダーサービス連携(例:Googleカレンダー、Outlookカレンダーなど) :
応用例 : kintoneのスケジュール管理アプリの予定を、普段利用しているGoogleカレンダーなどと双方向または一方向に同期させます。
効果 : スケジュールの一元管理が容易になり、予定の確認漏れを防ぎます。
AIサービス連携(例:ChatGPTなど) :
応用例 : kintoneに蓄積されたテキストデータ(問い合わせ履歴、日報など)をChatGPTのような生成AIに連携し、要約の作成、FAQの自動生成、文章校正などに活用します。
効果 : 資料作成 時間の短縮、情報分析の高度化、新たなインサイトの発見に繋がる可能性があります。
これらのプラグインや外部連携は、kintoneを単なる情報管理ツールから、業務全体のハブとなる強力なプラットフォームへと進化させます。自社の業種や業務内容、解決したい課題に合わせて、これらの拡張機能を賢く選択・導入することで、kintoneの活用価値を飛躍的に高めることができるでしょう。ただし、プラグインの導入やAPI連携の作成には、スタンダードコース以上の契約が必要となる場合が多い点に留意が必要です。
5: kintoneの価格・プランと費用対効果
kintone(キントーン)の導入を検討する上で、料金プランや費用、そしてそれに見合う効果が得られるのか(費用対効果)は非常に重要な判断材料となります。このセクションでは、kintoneの料金体系の特徴、プランの選び方、導入にかかる具体的なコストとそれによって削減できる手間や作業、さらに他社製品との比較ポイントについて詳しく解説します。
5-1: 料金プラン・費用の特徴と選び方
Kintoneの月額費用はいくらですか?
kintone(キントーン)の料金プランは、主に「ライトコース」「スタンダードコース」「ワイドコース」の3種類が用意されており、それぞれ利用できる機能やアプリ数・スペース数の上限、そして月額費用が異なります。
表3: kintone料金プラン比較(2024年11月改定後情報含む)
項目 ライトコース スタンダードコース ワイドコース 月額料金/ユーザー(税抜) 1,000円 1,800円 3,000円 最小契約ユーザー数 10ユーザー 10ユーザー 1,000ユーザー アプリ数上限 200個 1,000個 3,000個 スペース数上限 100個 500個 1,000個 外部連携・プラグイン × 利用不可 ○ 利用可能 ○ 利用可能 API利用 × 利用不可 ○ 利用可能 ○ 利用可能 JavaScript/CSSカスタマイズ × 利用不可 ○ 利用可能 ○ 利用可能 ディスク容量/ユーザー 5GB 5GB 5GB 主な対象 小規模チーム、コスト重視、機能拡張不要 中小企業、主力システムとして活用、機能拡張必要 大企業、全社導入、大規模利用 無料お試し なし 30日間あり 要問い合わせ
料金プランの主な特徴:
初期費用無料 : どのプランを選んでも、初期費用はかかりません。
ユーザー単位の月額課金 : 基本的に利用するユーザー数に応じた月額料金が発生します。ただし、各コースには最小契約ユーザー数が設定されています(例:ライトコース、スタンダードコースは10ユーザーから)。
契約期間 : 1ヶ月ごとに契約更新が可能です。
ディスク容量 : 1ユーザーあたり5GBのディスク容量が標準で付与されます。組織全体では「契約ユーザー数 × 5GB」が利用可能です。容量が不足する場合は、有料オプション(例:月額1,000円/10GB)で増設できます。
ゲストユーザー : 社外のユーザーを限定的にkintoneに招待できる「ゲストユーザー」向けの料金プランも用意されています。ライトコースは月額700円/ゲストユーザー、スタンダードコースは月額1,440円/ゲストユーザーなど、コースによって価格が異なります。
オプションサービス : よりセキュアなアクセスを実現する「セキュアアクセス」(月額250円/ユーザー)や、メール共有を便利にする「メール共有オプション」(スタンダードコース以上で利用可能)など、必要に応じて追加できる有料オプションがあります。
特別ライセンス : 教育機関向けの「アカデミック/ガバメントライセンス」や、非営利団体向けの「チーム応援ライセンス」といった特別価格のライセンスも提供されています。
料金プランの選び方:
どのプランを選ぶべきかは、企業の規模、kintoneの利用目的、必要な機能、そして予算によって異なります。
ライトコースが適しているケース :
利用ユーザー数が比較的少ない小規模なチームや部門での利用。
まずは基本的なデータ管理や情報共有から始めたい、コストを最優先に抑えたい場合。
プラグインやAPI連携といった外部連携機能や、JavaScriptによるカスタマイズが不要な場合。
スタンダードコースが適しているケース :
kintoneを中核的な業務システムとして本格的に活用したい中小企業。
帳票出力プラグイン、外部連携フォーム、API連携など、kintoneの拡張機能をフルに活用して、自社の業務に最適化されたシステムを構築したい場合。
将来的に利用範囲の拡大や、より高度なカスタマイズを行う可能性を見据えている場合。
30日間の無料お試し期間を利用して、じっくりと機能を試してから導入を決定したい場合(ライトコースには無料お試しがありません)。 多くの企業にとって、kintoneの真価である「拡張性」を活かせるスタンダードコースが、費用対効果のバランスが良い選択肢となることが多いでしょう。
ワイドコースが適しているケース :
従業員数が多く、kintoneの契約ユーザー数が1,000人を超えるような大企業での全社導入。
非常に多くのアプリやスペースを作成・管理する必要がある大規模な利用。
プラン選択に迷った場合は、まずはスタンダードコースの無料お試しを利用し、自社の業務でどの程度の機能が必要になるかを見極めるのが良いでしょう。また、月額ライセンス料だけでなく、利用する可能性のあるプラグインの費用や、将来的なディスク増設費用なども含めた総コスト(TCO)を考慮して検討することが重要です。
5-2: kintone導入にかかるコストと削減できる手間・作業
kintone(キントーン)を導入する際には、初期費用や月額料金といった直接的なコストが発生しますが、それと同時に、これまでかかっていた多くの手間や作業を削減し、間接的なコスト削減や生産性向上という大きなメリットをもたらします。ここでは、kintone導入にかかる主なコストと、それによって削減が期待できる手間や作業について具体的に見ていきましょう。
kintone導入にかかる主なコスト
初期費用 : kintoneのライセンス自体には初期費用はかかりません。
月額(または年額)ライセンス費用 : 選択した料金プラン(ライト、スタンダード、ワイド)と契約ユーザー数に応じて発生します。
オプション費用 :
ディスク増設 : 標準のディスク容量(5GB/ユーザー)を超える場合に必要となる追加費用(例:月額1,000円/10GB)。
セキュアアクセス : IPアドレス制限や端末認証など、より高度なセキュリティを求める場合の追加費用(例:月額250円/ユーザー)。
その他、メール共有オプションなど、特定の機能を追加するための費用。
プラグイン費用 :
kintoneの機能を拡張するためのプラグインには、無料で利用できるものもありますが、高機能なものや特定の業務に特化したものの多くは有料(月額制や買い切り型など)です。導入するプラグインの数や種類によって、この費用は変動します。
カスタマイズ開発費用 :
標準機能や既存のプラグインだけでは要件を満たせず、JavaScriptやAPIを利用した独自のカスタマイズ開発が必要な場合、自社で対応できなければ外部の開発パートナーに委託する費用が発生します。連携の規模や複雑さにもよりますが、一般的に基幹システムとのAPI連携などでは数万円から数十万円程度の費用がかかることもあります。
教育・研修費用 :
社内でのkintone利用をスムーズに浸透させるために、利用者向けの研修やマニュアル作成、サポート体制の構築などに間接的なコスト(時間や人件費)がかかる場合があります。
kintone導入によって削減できる手間・作業(費用対効果)
kintoneを導入することで、以下のような手間や作業が削減され、結果として大きな費用対効果が期待できます。
手作業によるデータ入力・転記作業の削減 :
Excelや紙の帳票への二重入力、三重入力といった非効率な作業が不要になります。ルックアップ機能やプロセス管理による自動入力・更新により、大幅な時間短縮と入力ミスの削減が可能です。
紙ベースの書類作成・管理・保管コストの削減 :
見積書、請求書、申請書などをkintone上で作成・承認・管理することで、紙代、印刷代、郵送費、ファイル代、キャビネットなどの保管スペース、さらには書類を探す時間といったコストを大幅に削減できます。
会議や報告のための資料作成時間の短縮 :
kintoneにデータがリアルタイムに集約・可視化されるため、会議や報告のために都度Excelでデータを集計し直し、PowerPointで資料を作成するといった手間が大幅に軽減されます。
情報検索時間の短縮 :
必要な情報や過去の経緯がkintone内のアプリやスペースに一元管理されるため、「あの資料どこだっけ?」「あの件どうなった?」といった情報検索にかかる無駄な時間を削減できます。
複数システム利用によるライセンス費用や管理コストの削減 :
これまで複数の異なるツールや小規模システムで行っていた業務をkintoneに集約することで、それらのツールのライセンス費用や保守管理にかかるコスト、手間を削減できます。
移動時間やコミュニケーションロスの削減 :
クラウド上で情報が共有されるため、承認のためだけにオフィスに戻ったり、情報確認のために電話やメールで何度もやり取りしたりする手間が減ります。
ミスによる手戻り作業の削減 :
入力ミスや確認漏れ、請求漏れなどが減ることで、修正作業や再処理といった手戻りの手間と、それに伴う機会損失を防ぎます。
残業時間の削減 :
業務全体の効率化が進むことで、残業時間が削減され、人件費の抑制だけでなく、従業員のワークライフバランス向上にも繋がります。
kintone導入のコストは、単なる「経費」として捉えるのではなく、これらの削減できる手間や作業、そしてそれによって生まれる時間や生産性の向上、さらには従業員のモチベーションアップや新しい価値創出の機会といった、将来的な「投資対効果(ROI)」の観点から評価することが重要です。株式会社クレーンメンテ広島の事例では、kintone導入により月210時間の作業時間が削減され、年間1008万円分の費用対効果が得られたと報告されています。このような具体的な効果を試算することで、kintone導入の意義がより明確になるでしょう。
5-3: 他社製品・CRMツールとの比較ポイント
kintone(キントーン)は非常に多機能で柔軟なプラットフォームですが、市場には他にも様々な業務改善ツールやCRM(顧客関係管理)ツールが存在します。自社にとって最適なツールを選ぶためには、kintoneの特徴を理解した上で、他の選択肢と比較検討することが不可欠です。ここでは、kintoneと他社製品、特にCRMツールとを比較する際の主要なポイントを解説します。
kintoneの基本的な特性(比較の前提として)
業務アプリ構築プラットフォーム : kintoneの最も大きな特徴は、特定の業務に特化した完成品ではなく、ユーザー自身がノーコード・ローコードで自社の業務に合わせたカスタムアプリケーションを自由に構築できる「プラットフォーム」であるという点です。CRM機能も、顧客管理アプリや案件管理アプリとしてユーザーが作成・活用する形が基本です。
高いカスタマイズ性と柔軟性 : 業務プロセスの細部に至るまで、自社のやり方に合わせてシステムを設計・変更できる自由度が非常に高いです。
情報集約・一元管理の強み : 社内に散在する様々な種類のデータ(顧客情報、案件情報、プロジェクト進捗、日報、問い合わせ履歴、文書など)をkintone上に集約し、一元的に管理・活用することを得意としています。これにより、部門横断的な情報共有や業務連携が促進されます。
一般的なCRMツールとの比較ポイント(例:Zoho CRMなど)
多くのCRMツールは、顧客情報の管理、営業活動の支援(SFA機能)、マーケティング活動の自動化(MA機能)といった領域に特化して設計されています。
目的の違い :
kintone : 主な目的は、社内の様々な「業務のシステム化」と「データの集約・一元管理」による業務効率化です。CRMはその一環として構築可能です。
専門CRMツール : 主な目的は、「顧客との関係性強化」を通じた「営業成果の最大化」や「売上向上」です。
機能の深さと範囲 :
kintone : 標準機能は汎用的ですが、特定の業務(例:高度な営業パイプライン管理、MAキャンペーンの自動実行など)に特化した機能は、アプリの作り込みやプラグイン、外部連携によって補う必要があります。
専門CRMツール : 顧客管理、商談管理、営業活動分析、リード育成、メールマーケティングといったCRM/SFA/MA関連の機能が、標準で深く作り込まれていることが多いです。KPI設定やファネル分析など、営業成果に直結する分析機能も充実している傾向があります。
導入・運用の手軽さと専門性 :
kintone : 基本的なアプリ作成はノーコードで手軽に始められますが、高度なCRM機能を実装しようとすると、アプリ設計の知識やプラグイン選定、場合によってはカスタマイズ開発のスキルが必要になることがあります。
専門CRMツール : 多くの機能が最初からパッケージ化されているため、設定を行えばすぐに使い始められる反面、機能が多すぎて使いこなせなかったり、自社の業務プロセスに合わせるためのカスタマイズに制約があったりする場合もあります。
コスト構造 :
kintone : 基本ライセンス費用は比較的安価なプランからありますが、高度な機能を実現するために有料プラグインや外部連携サービスを利用すると、追加コストが発生する可能性があります。
専門CRMツール : 一般的にkintoneの基本プランより月額ライセンス費用が高めな傾向がありますが、必要な機能がオールインワンで含まれているため、追加費用が発生しにくいシンプルな料金体系の場合もあります。無料プランや低価格プランを提供しているツールもあります。
適した企業・ニーズ :
kintoneが適しているケース :
CRMだけでなく、人事、総務、プロジェクト管理など、社内の様々な業務を一つのプラットフォームでシステム化し、情報を一元管理したい企業。
自社独自のユニークな業務プロセスに合わせて、柔軟にシステムを構築・改修したい企業。
まずは低コストでスモールスタートし、徐々に利用範囲や機能を拡張していきたい企業。
IT専門の担当者が少なく、現場主導で業務改善を進めたい企業。
専門CRMツールが適しているケース :
最優先課題が顧客管理の強化と営業プロセスの効率化であり、売上向上に直結するSFA/MA機能をすぐに活用したい企業。
業界標準のベストプラクティスに基づいた高度なCRM機能を求めている企業。
システム構築の手間をかけずに、完成された専門ツールを導入したい企業。
Salesforceとの比較(間接的な情報より)
Salesforceは世界的にシェアの高い高機能なCRMプラットフォームですが、その多機能さゆえに「使いこなすハードルが高い」「導入・運用コストが高い」と感じる企業も一部にはあるようです。kintoneは、Salesforceほどの高度なCRM機能が標準で全て備わっているわけではありませんが、より手軽に導入でき、自社のニーズに合わせて必要な機能をアプリとして構築・追加していくアプローチが可能です。Salesforceで実現したいことの一部を、より低コストかつ柔軟にkintoneで実現できるケースもあります。
比較検討の際の重要ポイント
導入目的の明確化 : 「何を解決したいのか」「どのような状態を目指すのか」を明確にすることが最も重要です。目的によって最適なツールは異なります。
必要な機能の洗い出し : 自社の業務に必要な機能を具体的にリストアップし、各ツールがそれらを標準で提供しているか、追加開発やプラグインで対応可能かを確認します。
操作性・使いやすさ : 実際にデモ版や無料トライアルを利用して、現場の担当者が直感的に操作できるか、自社のITリテラシーに合っているかを確認します。
カスタマイズ性と拡張性 : 将来的な業務の変化や拡張に対応できる柔軟性があるか、外部システムとの連携は容易かなどを評価します。
総所有コスト(TCO) : 初期費用、月額(年額)ライセンス費用だけでなく、カスタマイズ費用、プラグイン費用、保守運用費用、教育費用などを含めたトータルコストで比較します。
サポート体制 : 導入時や運用開始後のサポート体制が充実しているかを確認します。
kintoneは「業務アプリ構築プラットフォーム」という特性上、多くの専門CRMツールとは立ち位置が異なります。どちらが優れているというわけではなく、自社の目的、規模、業務内容、ITスキル、予算などを総合的に考慮し、最適なツールを選定することが成功の鍵となります。
6: kintoneのカスタマイズ・連携でさらに便利に
kintone(キントーン)は、そのままでも多くの業務に対応できる強力なツールですが、カスタマイズや外部サービスとの連携を行うことで、さらに便利に、そして自社の業務に深くフィットしたシステムへと進化させることが可能です。このセクションでは、テンプレートやプラグインを活用した手軽な拡張方法から、社内外のシステムやExcelとの連携、さらにはノーコード・プログラミングによる本格的な開発・自動化支援まで、kintoneを最大限に活用するためのヒントをご紹介します。
6-1: テンプレート・プラグインでできる拡張
kintone(キントーン)の大きな魅力の一つは、専門的なプログラミングの知識がなくても、手軽に機能を拡張し、自社の業務に合わせたシステムを構築できる点です。その代表的な手段が「テンプレート」と「プラグイン」の活用です。
テンプレート(サンプルアプリ)の活用による迅速なアプリ導入
kintoneには、様々な業種や業務シーンを想定してあらかじめ作成された100種類以上の「サンプルアプリ」(テンプレート)が用意されています 5 。
主なテンプレート例 :
日報管理、顧客リスト、案件管理、問い合わせ管理、タスク管理(TODOリスト)、契約書管理、経費申請、備品管理、プロジェクト進捗管理、採用面接管理など、日常業務ですぐに使えるものが多数揃っています。
活用方法 :
kintoneのアプリ作成画面から「アプリストアから選ぶ」または「サンプルアプリを追加する」を選択します。
目的に合ったサンプルアプリを選び、自社のkintone環境に数クリックで追加できます。
追加したサンプルアプリは、そのまま使い始めることもできますし、さらに自社の業務に合わせて項目を追加・修正したり、デザインを変更したりといったカスタマイズも自由に行えます。
メリット :
ゼロからアプリを設計する手間が省け、迅速にシステムの導入・運用を開始できます 31 。
どのような項目(フィールド)を設定すれば良いか分からない場合でも、テンプレートを参考にすることで、効率的にアプリ作成を進められます。
ベストプラクティスが反映されたアプリ構成をベースにできるため、業務改善のヒントを得ることもできます。
プラグインによる手軽な機能拡張
「プラグイン」とは、kintoneの標準機能だけでは実現できない特定の機能を追加したり、操作性やデザインを向上させたりするための、いわば「追加パーツ」のようなものです。
プラグインの特徴 :
多くの場合、JavaScriptやCSSといったプログラミングの知識がなくても、提供されているプラグインのファイル(通常はZIP形式)をkintoneにアップロードし、簡単な設定を行うだけで機能を拡張できます。
サイボウズ社自身や、多くのパートナー企業から、無料または有料の様々なプラグインが提供されています。
人気のプラグイン例と活用シーン :
帳票出力プラグイン (例: プリントクリエイター、RepotoneU): kintone内のデータからワンクリックで見積書、請求書、納品書などの帳票をPDFやExcel形式で出力。
外部連携フォームプラグイン (例: フォームブリッジ): kintoneアカウントを持たない社外の人がWebフォームからkintoneに直接データを登録可能に。アンケート、問い合わせ受付、イベント申し込みなどに活用 。
カレンダー表示プラグイン (例: KOYOMI, カレンダーPlus): kintoneのスケジュールデータやタスク情報を視覚的なカレンダー形式で表示・管理。
高度なグラフ・ダッシュボードプラグイン (例: krewDashboard): 複数のアプリのデータを集約し、より高度でインタラクティブなグラフや経営ダッシュボードを作成。
ガントチャートプラグイン (例: KOUTEI): プロジェクトのタスクや工程をガントチャート形式で表示し、進捗管理を効率化。
その他、一覧画面の検索性向上、条件に応じたフィールドの表示制御、入力支援など、多種多様なプラグインが存在します。
プラグイン導入のメリット :
自社でプログラミング開発を行うことなく、短期間かつ低コストで高度な機能を追加できます。
業務の特殊なニーズにも柔軟に対応しやすくなります。
プラグイン利用時の注意点 :
多くのプラグイン(特にAPIを利用するもの)は、kintoneの「スタンダードコース」以上の契約が必要です。
無償プラグインの場合、提供元によるサポートや将来的なアップデートが保証されない、突然提供が終了する可能性がある、他のプラグインとの間で機能が競合(干渉)してしまうリスクがある、といった点に注意が必要です。
有償プラグインの場合は、提供元による保守サービスやアップデート対応が期待できるため、企業での安定した運用には適しています。
テンプレートとプラグインを賢く活用することで、kintoneの導入から価値実現までの時間を大幅に短縮し、特別なITスキルがなくても、自社の業務に最適化されたシステム環境を効率的に構築・運用していくことが可能になります。これらは、kintoneエコシステムがもたらす大きな恩恵の一つと言えるでしょう。
6-2: 社外・基幹システム・Excelなど外部サービスとの連携方法
kintone(キントーン)は、単独のシステムとしてだけでなく、社内外の様々な外部サービスや既存システムと連携することで、その価値をさらに高めることができます。情報がサイロ化するのを防ぎ、シームレスなデータフローを構築することで、業務全体の効率化と高度化を実現します。ここでは、代表的な連携対象と、その連携方法について解説します。
1. 社外との連携
kintoneは、社内の業務管理だけでなく、顧客、取引先、パートナー企業といった社外の関係者との情報共有やコミュニケーションにも活用できます。
ゲストスペース機能 :
特定のプロジェクトや業務において、社外のメンバーを「ゲストユーザー」としてkintoneの専用スペース(ゲストスペース)に招待できます。
ゲストユーザーは、招待されたスペース内のアプリやスレッドのみにアクセスが制限されるため、セキュリティを保ちながら、必要な情報を共有し、共同で作業を進めることが可能です。例えば、共同プロジェクトの進捗管理、資料共有、質疑応答などに利用されます。
Webフォーム作成プラグインの活用 (例: フォームブリッジ):
kintoneアカウントを持たない不特定多数の社外の人が、Webサイト上のフォームから直接kintoneにデータを入力できるようにするプラグインです。
これにより、ホームページからの問い合わせ受付、イベントやセミナーの参加申し込み、アンケートの実施、採用応募者のエントリーなどをkintoneで一元管理できます。入力されたデータは自動的にkintoneのアプリに登録されるため、手作業での転記が不要になります。
データ公開プラグインの活用 (例: kViewer):
kintone内に蓄積された情報を、kintoneアカウントを持たない社外の人にも安全に公開するためのプラグインです。
例えば、製品カタログ、よくある質問(FAQ)、イベントスケジュールなどをWebページとして公開し、常に最新の情報を外部に提供できます。公開する情報や範囲は細かく設定可能です。
2. 基幹システム(ERPなど)との連携
多くの企業では、会計、販売、生産といった中核業務を支える基幹システム(ERPなど)が稼働しています。kintoneはこれらの基幹システムと連携することで、データの二重入力を防ぎ、情報の一貫性を保ち、業務プロセス全体の効率化を図ることができます。
CSVファイル連携 :
最も手軽な連携方法の一つです。基幹システムから必要なデータをCSV形式でエクスポートし、それをkintoneのアプリにインポートします。逆に、kintoneのデータをCSVで出力し、基幹システムに取り込むことも可能です。手動またはバッチ処理などで半自動化することも考えられます。
API連携 :
kintoneが提供するAPI(Application Programming Interface)を活用し、基幹システムとkintone間でデータを自動的に同期・共有するシステムを開発します。これにより、リアルタイムに近いデータ連携が可能になります。ただし、API連携の作成には、通常、プログラミングの知識や開発スキルが必要となります。
連携例 : 基幹システムの顧客マスターや商品マスターをkintoneの関連アプリと同期する、kintoneで承認された経費精算データを会計システムに自動で仕訳入力するなど。
Webhook連携 :
kintoneのアプリで特定のイベント(レコードの追加・編集など)が発生した際に、その情報をリアルタイムで外部システム(基幹システム側でWebhook受信の仕組みが必要)にHTTPリクエストとして送信する機能です。
中間サーバーを利用した連携 :
より複雑なデータ変換や処理を伴う場合、kintoneと基幹システムの間に中間サーバーを介して連携を行うこともあります。
3. Excel/CSVとの連携
多くの業務で依然として広く使われているExcelやCSVファイルとも、kintoneは柔軟に連携できます。
Excel/CSVファイルからのアプリ作成 :
既存のExcelファイルやCSVファイルをkintoneにアップロードするだけで、そのファイルのデータと列構造を元に、新しいkintoneアプリを自動的に作成できます。これにより、過去の資料をスムーズにkintone環境へ移行できます。
既存アプリへのデータインポート :
既に作成済みのkintoneアプリに対して、ExcelやCSVファイルからレコード(データ行)を一括で登録したり、既存のレコードをまとめて更新したりできます。
kintoneからのデータエクスポート :
kintoneアプリ内のデータをCSV形式でエクスポートできます。エクスポートしたデータは、Excelでさらに詳細な分析を行ったり、他のシステムで活用したり、バックアップとして保管したりすることが可能です。
4. その他外部クラウドサービスとの連携
上記以外にも、kintoneは様々な外部クラウドサービスと連携することで、より広範な業務ニーズに対応できます 22 。
会計ソフト : freee会計、マネーフォワード クラウド会計など。
コミュニケーションツール : Slack、LINE WORKS、Microsoft Teamsなど。
クラウドストレージ : Dropbox、Google Drive、Boxなど。
MA(マーケティングオートメーション)ツール 、電子契約サービス 、カレンダーサービス(Googleカレンダーなど) 、BIツール など。
これらの外部サービスとの連携は、専用の連携サービスやプラグインを導入する方法と、APIやJavaScriptを活用して個別に開発する方法があります。
kintoneをハブとして、社内外の様々なシステムやサービスとデータを繋ぐことで、業務プロセスはよりシームレスになり、組織全体の情報活用レベルが向上します。自社の業務フローや既存システムの状況を考慮し、最適な連携方法を選択することが、kintone導入効果を最大化する鍵となります。
6-3: ノーコード・プログラミングによる開発・自動化支援
kintone(キントーン)の大きな特徴は、プログラミングの専門知識がない人でも業務アプリを開発できる「ノーコード」の手軽さと、より高度なカスタマイズや自動化を実現したい場合には「プログラミング」による開発も可能であるという、柔軟な開発オプションを提供している点です。これにより、企業のITスキルレベルやニーズに応じて、最適な方法でシステム構築と業務の自動化を進めることができます。
ノーコードによる開発・自動化
kintoneの基本思想はノーコードであり、多くの機能がプログラミングなしで利用できるように設計されています。
ドラッグ&ドロップでのアプリ開発 : 前述の通り、画面上で必要なフィールド(入力項目)を選んで配置するだけで、直感的に業務アプリを作成できます。
標準機能の組み合わせ : フィールド設定、一覧表示設定、グラフ設定、プロセス管理(ワークフロー)設定、アクセス権設定といったkintoneの標準機能を組み合わせることで、コーディングなしに多くの業務要件に対応したシステムを構築できます。
プラグインの活用 : 様々な機能を拡張するプラグインも、多くはプログラミングなしで導入・設定が可能です。これにより、帳票出力、外部連携フォームの設置、カレンダー表示といった高度な機能も手軽に追加できます。
ノーコードカスタマイズサービスの利用 : 「gusuku Customine(グスク カスタマイン)」のようなサードパーティ製のノーコードカスタマイズサービスを活用すると、プログラミングを記述することなく、「やること」と「条件」を画面上で選んで組み合わせるだけで、プラグインでは難しいような、より細やかで柔軟なkintoneカスタマイズを実現できます。例えば、「特定の条件でフィールドを非表示にする」「ボタンクリックで複数の処理を実行する」といった動作をノーコードで設定可能です。
プログラミングによる開発・自動化(ローコード/プロコード)
kintoneのスタンダードコース以上では、JavaScriptやAPIを活用した、より高度なカスタマイズやシステム連携、自動化処理の開発が可能です。
JavaScript/CSSによるカスタマイズ :
kintoneのアプリ画面やレコード詳細画面、一覧画面などの見た目(デザイン)や動作を、JavaScriptやCSSを使ってより細かくカスタマイズできます。
具体的な活用例 :
レコード一覧画面に独自の集計ボタンを設置し、クリックすると合計値などを表示する。
特定の条件(例:ステータスが「緊急」)に応じて、レコードの文字色や背景色を動的に変更する。
標準の計算フィールドでは実現できない複雑な計算処理を実装する。
フィールド間の入力値チェックを強化したり、入力に応じて他のフィールド値を自動変更したりする。
API(Application Programming Interface)の活用 :
kintoneはREST APIとJavaScript APIを提供しており、これらを活用することで、kintoneのデータを外部システムと送受信したり、kintoneの動作をプログラムから制御したりできます。
REST API : 主にサーバーサイドのプログラムから、kintoneアプリのレコードの取得・登録・更新・削除、ファイルのアップロード・ダウンロードなどを行います。外部システムとのデータ連携やバッチ処理などに利用されます。
JavaScript API : 主にkintoneの画面上で動作するJavaScriptから、表示されているレコードの情報にアクセスしたり、画面の動作をカスタマイズしたりします。
API連携事例 : ChatGPTのようなAIサービスとの連携、Dropboxなどのクラウドストレージとのファイル連携、freee会計などの会計ソフトとのデータ連携、Slackなどのコミュニケーションツールとの通知連携など、多岐にわたります。
Webhookの利用 :
kintoneのアプリでレコードが追加・編集されたり、ステータスが変更されたりといったイベントが発生した際に、その情報をリアルタイムで指定した外部URLにHTTP POSTリクエストとして送信する機能です。これをトリガーとして、外部システムで特定の処理を自動実行させることができます。
自動化支援の具体例
上記のノーコード・プログラミング手法を組み合わせることで、様々な業務の自動化が可能です。
プロセス管理による業務フローの自動化 : 申請内容に応じた承認ルートの自動分岐、承認後のステータス自動更新、関係者への自動通知など。
通知機能による自動リマインド・情報伝達 : タスクの締切日が近づくと担当者に自動でリマインド通知を送る、特定の条件(例:在庫数が閾値を下回る)を満たした際に管理者にアラート通知を送るなど。
APIやJavaScriptを活用した定型業務の自動化 : 定期的なデータ集計とレポート作成の自動化、外部システムからのデータ取り込みとkintoneへの自動登録、kintoneの更新情報を元にした他システムへの自動反映など。
RPAツールとの連携による広範な自動化 : kintone内外の複数のアプリケーションをまたがる定型的な操作(例:メールから添付ファイルを取得してkintoneに登録し、その内容を基幹システムにも入力する)をRPAで自動化し、そのトリガーや結果の管理をkintoneで行う。
kintoneは、プログラミングの知識がないビジネスユーザー(市民開発者)が手軽に業務改善を始められるノーコードの側面と、専門的な開発者がJavaScriptやAPIを駆使して高度なシステム構築や自動化を実現できるローコード/プロコードの側面を併せ持っています。これにより、企業は自社のリソースや必要なカスタマイズの度合いに応じて、最適な開発アプローチを選択し、段階的に業務の自動化と効率化を推進していくことができます。kintoneの導入は、単なるツール利用に留まらず、業務プロセス全体の最適化や戦略的な自動化を目指す上での強力な支援となるでしょう。
7: kintone導入時の注意点とよくある疑問
kintone(キントーン)は多くのメリットを提供する一方で、導入を成功させるためにはいくつかの注意点を理解し、よくある疑問を解消しておくことが重要です。このセクションでは、kintoneで「できること・できないこと」やデメリットを改めて把握し、過去の導入事例から学ぶべき失敗しないためのポイント、そして実際のユーザーからの評判や口コミについて解説します。これらを踏まえることで、より現実的かつ効果的なkintone導入計画を立てることができるでしょう。
7-1: できること・できないこと、デメリットの把握
kintone(キントーン)の導入を検討する際には、その機能の限界や潜在的なデメリットを正確に理解しておくことが、後の「こんなはずではなかった」という事態を避けるために不可欠です。
kintoneが得意とすること、つまり「できること」を再確認しましょう。これには、プログラミング知識なしでのカスタム業務アプリ作成、データの一元管理とリアルタイム共有、ワークフロー(プロセス管理)による業務の標準化・自動化、チーム内コミュニケーションの促進、基本的なデータ集計とグラフによる可視化などが含まれます。
できないこと・デメリット :一方で、以下のような点はkintoneの標準機能だけでは難しかったり、注意が必要だったりします。
拡張機能やカスタマイズに伴う追加コスト : kintoneの基本料金は比較的安価ですが、より高度な機能を実現するために有料のプラグインを多数導入したり、JavaScriptやAPIを活用した独自のカスタマイズ開発を外部に委託したりすると、追加のコストが発生します。予算計画時にはこれらの潜在的な費用も考慮に入れる必要があります。
アプリ乱立とシステム連携の複雑化リスク : 誰でも簡単にアプリを作成できる反面、明確な管理ルールがないと、似たようなアプリが乱立したり、使われないアプリが増えたりして、かえって情報が探しにくくなることがあります。また、多くのアプリ間で複雑なデータ連携を組もうとすると、設計やメンテナンスの負担が重くなる可能性があります。
大量データの処理・管理の限界 : kintoneの標準ディスク容量は1ユーザーあたり5GBであり、組織全体では「ユーザー数 × 5GB」となります。画像や動画などの大容量ファイルを大量に扱う場合は、容量不足になる可能性があります。また、一度に数万件を超えるような大量のレコードを一括処理したり、非常に複雑な計算を多数のデータに対してリアルタイムで行ったりすることは、パフォーマンス面で得意ではありません。
専門性の高い基幹システムの完全な代替は困難 : 特定の業種に特化した高度な会計システム、生産管理システム、POSシステムなど、専門性の高い基幹システムが持つ全ての機能をkintoneだけで完全に置き換えるのは難しい場合があります。これらのシステムとは、kintoneを補完的に活用するか、データ連携を行うのが現実的です。
デザイン・UIのカスタマイズ性の限界 : 基本的なフォームレイアウトや色使いはある程度カスタマイズできますが、Webサイトのようにピクセル単位で自由にデザインを組んだり、非常に特殊なユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を実現したりするには限界があります。
導入・定着には計画と努力が必要 : 「簡単に始められる」とはいえ、実際に業務で効果的に活用し、組織に定着させるためには、適切なアプリ設計、データ移行、運用ルールの策定、利用者への教育といった計画的な取り組みと、ある程度の時間・労力が必要です 13。単にツールを導入するだけでは成功しません。
検索機能の特性理解 : 全文検索機能はありますが、大量のデータの中から特定の情報をピンポイントで、かつ高度な条件で絞り込んで探し出すには、アプリの設計段階で検索しやすいようなフィールド構成を工夫したり、一覧の絞り込み条件をうまく設定したりする必要があります。
プラグイン利用時の注意点 : 無償で提供されているプラグインは、提供元によるサポートがなかったり、kintone本体のアップデートによって突然動作しなくなったり、提供が終了したりするリスクがあります。また、複数のプラグインを同時に利用すると、機能が競合して予期せぬ不具合が発生する可能性も考慮する必要があります。
これらの「できないこと」や「デメリット」を事前に把握しておくことは、kintoneに対する過度な期待を避け、現実的な導入計画を立てる上で非常に重要です。kintoneが万能ツールではないことを理解し、その得意分野を最大限に活かしつつ、不得意な部分は他のツールや運用方法で補うといった、バランスの取れたアプローチが求められます。多くのデメリットは、事前の十分な計画、適切な運用ルールの設定、そして必要に応じた外部リソース(プラグイン開発パートナーなど)の活用によって、軽減または回避することが可能です。
7-2: 導入事例から学ぶ失敗しないポイント
kintone(キントーン)の導入を成功させるためには、過去の事例から学び、よくある失敗パターンを避けることが賢明です。ここでは、kintone導入で陥りがちな失敗例と、それらを回避し、効果的な活用へと繋げるための重要なポイントを解説します 。
よくある失敗事例
実現したいことが複雑すぎたり、既存のやり方に固執しすぎて挫折 :
原因 : kintoneで何もかも実現しようと最初から欲張りすぎたり、これまでのExcelや紙での業務フローをそのままkintoneに持ち込もうとしたりすることで、アプリの設計が非常に複雑になり、結局作れずに頓挫してしまうケース。
現場担当者に使用してもらえず定着しない :
原因 : 情報システム部門や管理者がトップダウンでアプリを構築し、実際に業務で使う現場担当者の意見やニーズが十分に反映されていない場合、使い勝手が悪く感じられたり、業務の実態に合わなかったりして、結局使われなくなり、Excelなどとの二重管理状態に陥ってしまうケース。
部署ごとにバラバラに活用し、全社的な効果が出ていない :
原因 : 各部署がそれぞれ自由にアプリを作成・利用しているものの、部署間でのデータ連携や情報共有の仕組みが整っておらず、結果として組織全体としての業務効率化やデータ活用が進まず、kintone導入前とさほど変わらない「サイロ化」が再発してしまうケース。
失敗しないための重要なポイント
これらの失敗を避け、kintone導入を成功に導くためには、以下のポイントを意識することが不可欠です。
導入目的の明確化と共有 :
「何のためにkintoneを導入するのか」「具体的にどのような業務課題を解決したいのか」「どのような状態を目指すのか」といった導入目的を明確にし、経営層から現場担当者まで、関係者全員でその目的意識を共有することが最も重要です。目的が明確であれば、アプリの設計方針や優先順位もおのずと定まります。
スモールスタートと段階的な拡張 :
最初から大規模で完璧なシステムを目指すのではなく、まずは特定の業務や一部のチームで、シンプルな機能のアプリから小さく始めてみましょう。そこで効果を実感し、運用ノウハウを蓄積しながら、徐々に利用範囲や機能、連携するアプリを増やしていく「アジャイル型」のアプローチが有効です。トライ&エラーを繰り返しながら改善していくことが大切です。
現場担当者の積極的な巻き込み :
kintoneアプリの設計段階から、実際にそのアプリを使って業務を行う現場の担当者を積極的に巻き込み、意見や要望を丁寧にヒアリングしましょう。現場のニーズに即した使いやすいアプリを一緒に作り上げることで、導入後の定着率が格段に向上し、担当者の当事者意識も醸成されます。
業務整理の実施 :
kintoneを導入する前に、まず既存の業務フローを見直し、どこに課題があるのか、どの部分をkintoneでシステム化するのが効果的か、といった業務整理を行うことが重要です。非効率な業務プロセスをそのままkintoneに移行しても、十分な効果は得られません。
専任の推進担当者・チームの設置 :
kintoneの導入・運用をリードし、社内での活用を推進する専任の担当者やチームを設けることが望ましいです。アプリ作成のサポート、運用ルールの策定・周知、利用者からの問い合わせ対応、成功事例の共有といった役割を担います。
運用ルールの策定と徹底 :
アプリの作成権限、命名規則、個人情報や機密情報の取り扱い、データの入力ルール、不要になったアプリの管理方法など、kintoneを組織全体で統制を保ちながら効果的に活用するための運用ルールを策定し、全社で徹底することが不可欠です。
継続的な教育とサポート体制の整備 :
利用者向けの操作説明会や活用セミナーを定期的に開催したり、社内に気軽に質問できるヘルプデスクやコミュニティを設けたりするなど、利用者が安心してkintoneを学び、活用できる環境を整備することが、利用促進とスキルアップに繋がります。
経営層の理解とコミットメント :
kintone導入による業務改革の重要性を経営層が理解し、積極的に支援する姿勢を示すことが、全社的な取り組みを後押しします。
外部専門家の活用検討 :
自社だけでのkintone導入や高度なカスタマイズ、運用体制の構築が難しいと感じる場合は、サイボウズのオフィシャルパートナーなど、kintone導入支援の実績が豊富な外部の専門家のサポートを受けることも有効な選択肢です。業務分析からアプリ設計、開発、定着支援まで、幅広いサポートが期待できます。
kintone導入の成功は、単にツールを導入することではなく、組織の業務プロセスや働き方を見直し、関係者が一丸となって変化に取り組む「チェンジマネジメント」の側面が強いと言えます。技術的な側面だけでなく、これらの「人的要因」や「組織的要因」に目を向け、丁寧に進めていくことが、失敗を避け、kintoneのポテンシャルを最大限に引き出すための鍵となります。
7-3: kintoneの評判・口コミとユーザーの声
kintone(キントーン)を実際に利用しているユーザーは、どのような点に満足し、またどのような点に改善を求めているのでしょうか。ここでは、様々なレビューサイトや導入事例から集められたkintoneの評判や口コミ、ユーザーの声をご紹介します。これらは、kintoneのリアルな評価を知る上で貴重な情報源となります。
kintoneの良い評判・口コミ(メリットとして評価される点)
多くのユーザーが良い点として挙げているのは、主に以下の項目です。
圧倒的なカスタマイズ性の高さと自由度 :
「自社の業務や、自分たちの仕事の進め方に合わせて、本当に必要な機能だけを持つアプリやスペースを構築できる」「既存のパッケージソフトにありがちな無駄な機能がなく、オーダーメイドのような使いやすさを実現できる」といった声が多く聞かれます。この柔軟性が、様々な業種・業務に対応できるkintoneの最大の強みと認識されています。
ノーコード・ローコードでの開発の容易さ :
「プログラミングの専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップといった直感的な操作で、業務に必要なアプリを簡単に、かつ短時間で作成できる点が素晴らしい」という評価が非常に多いです。これにより、IT部門に頼らずとも現場主導で業務改善を進められる点が支持されています。「非エンジニアでも簡単に業務フローをデジタル化できた」という声もあります。
情報の一元管理と共有のしやすさ :
「これまでExcelファイルやメール、個別のシステムに散在していた情報をkintoneに集約することで、必要な情報にすぐにアクセスできるようになり、チーム内の情報共有が格段にスムーズになった」という意見が多数あります。リアルタイムでの情報共有は、業務のスピードアップに不可欠とされています。
導入・運用開始のスピード感 :
クラウドサービスであるため、サーバー構築などの手間がなく、アカウントを登録すればすぐに利用を開始できる手軽さが評価されています。また、アプリ作成も短時間で行えるため、思いついた業務改善をすぐに形にできる点もメリットとして挙げられています。
コミュニケーション機能の充実 :
各レコード(データ)に直接コメントを書き込める機能や、関係者への通知機能が充実しているため、「データに基づいた具体的なコミュニケーションが取りやすく、情報共有の漏れが減った」「チームの連携が強化された」といった声があります。
豊富なテンプレートとプラグイン :
すぐに使える業務別サンプルアプリ(テンプレート)が多数用意されている点や、標準機能だけでは足りない部分を補うためのプラグインが豊富に提供されている点が、開発の手間を省き、迅速なシステム構築を可能にすると評価されています。
kintoneの悪い評判・改善を求める声(デメリットや課題として指摘される点)
一方で、改善を求める声や、利用する上での課題として以下のような点が挙げられています。
多機能すぎて使いこなせない・学習コストがかかる :
「機能が非常に豊富で自由度が高い反面、全ての機能を理解し、効果的に使いこなすまでにはある程度の時間と学習が必要だと感じる」「直感的な操作でできることは多いが、少し複雑なことをしようとすると、ツールを十分に理解していないと難しい」といった意見が見られます。導入目的が曖昧だと、どの機能を使えば良いか分からず、宝の持ち腐れになる可能性も指摘されています。
高度なカスタマイズには専門知識が必要 :
基本的なアプリ作成は簡単でも、「条件分岐を多用した複雑なプロセス管理を設定したい」「JavaScriptやAPIを使って独自の機能を開発したり、外部システムと高度な連携をしたりしたい」といった場合には、やはりプログラミングの知識や専門的なスキルが求められる、という声があります。
コストに関する懸念 :
スタンダードコースの月額料金や、高機能な有料プラグインを複数利用する場合のトータルコストが、特に小規模な企業にとっては負担に感じられることがあるようです。「安さが決め手で導入したが、追加機能にプラスの料金がかかることに慎重になる」という意見も見られます。
UI・UXに関する一部の具体的な指摘 :
「一覧画面で表示する項目の並び順を自由に変更できない」「アプリの一覧で、よく使うアプリだけを表示したり、不要なアプリを非表示にしたりする機能が欲しい」「プロセス管理のフローが複雑になると、全体像が掴みづらくなる」といった、より使い勝手を向上させるための具体的な改善要望も挙がっています。
サポートドキュメントの分かりにくさ :
公式のヘルプドキュメントやマニュアルが、「情報量が多すぎて探しにくい」「専門用語が多くて分かりにくい」と感じるユーザーも一部にいるようです。
ディスク容量とモバイルアプリの動作 :
「スマートフォンアプリにインストールすると動作が重く感じることがある」「ディスク容量の上限(5GB/ユーザー)が、画像や動画を多用する業務では心許ない」といった指摘もあります。
ユーザーの声の傾向まとめ
総じて、kintoneの評判は、「高い自由度とカスタマイズ性、そしてノーコードでの開発の容易さ」という強力なメリットが高く評価されている一方で、その「多機能性ゆえの学習コストや、高度な活用における専門知識の必要性、そしてコスト面での課題」が指摘されるという傾向にあります。
ユーザーは、kintoneを使い始める初期段階ではその「手軽さ」や「分かりやすさ」に満足感を得ることが多いようです。しかし、活用が進み、より高度な業務改善やシステム連携を目指そうとすると、標準機能の限界や専門知識の壁、追加コストといった課題に直面するケースが見受けられます。
したがって、kintone導入を成功させるためには、これらのユーザーの声を参考に、自社のITリテラシーや導入目的、予算などを総合的に考慮し、現実的な期待値を持って計画的に進めることが重要と言えるでしょう。
8: まとめ|kintoneで業務効率化を実現しよう
ここまで、読んでいただきましてありがとうございます。kintone(キントーン)の基本概要から主な機能、具体的な使い方、様々な業種での活用事例、料金プラン、導入時の注意点、そしてユーザーの評判に至るまで、幅広く解説してきました。
kintoneが提供する最大の価値は、プログラミングの専門知識がない人でも、自社の業務に合わせて必要な業務アプリケーションを簡単に作成・カスタマイズでき、それを通じて社内の情報を一元管理し、日々の業務プロセスを大幅に効率化・可視化できる点にあると言えるでしょう。
Excelや紙ベースでの管理に限界を感じている企業、情報が部門ごとにサイロ化してしまい共有・活用が進まない企業、既存のパッケージシステムではカバーしきれない細かな業務改善ニーズを抱える企業にとって、kintoneは非常に強力なソリューションとなり
引用文献
kintone(キントーン)とはあらゆる業務に対応したシステム作成ツール!10個のメリットを紹介
kintone(キントーン)とは – サイボウズ公式
初心者向け|kintone(キントーン)でできることやできないこと、評判とは – ナレカン
kintoneの評判・口コミ|全2429件のユーザー満足度を紹介! – ITトレンド
JavaScriptやCSSを使用したkintone全体のカスタマイズ – サイボウズ製品 ヘルプ
【徹底解説】kintone(キントーン)の2つの料金プラン!導入メリットと活用に向いている4つのケースを紹介 – NTT東日本 法人のお客さま
サイボウズ kintone(キントーン) | 大塚商会
2024 年 10 月からの サイボウズ- cybozu.com 価格改定に関するご案内
Kintoneの導入事例10選|製造業や自治体の事例も紹介【2025年最新版】 | システム幹事
アプリを作ってみよう | kintone ヘルプ
実例に学ぶ、DXが進む「基幹システム×業務システム」の使い分け:業務のデジタル化のコツは3つのポイント – ITmedia エンタープライズ
【初心者必見】kintoneアプリの基本的な作成方法と操作方法を解説! – Smart at
kintoneで利用できるフィールド一覧 – サイボウズ製品 ヘルプ
kintoneとExcelの比較:データベース構造の違いやそれぞれの得意を徹底解説
一覧画面表示件数100件以上表示する – kintone カスタマイズ – cybozu developer community
kintone(キントーン)とは?8つのできること・できないことをわかりやすく紹介 | MakeLeaps
CSVファイルからアプリを作成する – Kintone Help
KintoneアプリにExcel/CSV ファイルをインポートする方法 | DX推進の窓口
kintone × 会計システムで一気通貫!ストレスフリーに!
Slack連携を設定/解除する | kintone ヘルプ
自治体向けkintone(キントーン) | 大塚商会
連携サービス活用例 | フォーム・カレンダー・メール・高度な機能 | kintoneの歩き方
現場サポート 様の導入事例 – kintone – サイボウズ
アクセス権の設定方法 | 閲覧・編集・削除権限の設定 | kintoneの歩き方
アプリ運用ルール策定ガイド 基本機能編〈第2版〉 – Kintone
アプリを作ってみよう – Kintone Help
チームメンバーを招待する | kintone ヘルプ
アプリをはじめから作成する – Kintone Help
プロセス管理と組み合わせると便利な設定 – Kintone Help
kintone と Zoho CRM の比較 機能・料金の違いと移行手順を解説
【3選】kintoneのよくある導入失敗事例と対処法 | DXの右腕
kintoneの評判・口コミ 全477件 – ITreview
日清食品グループ 様の導入事例 – kintone – サイボウズ
自治体 導入事例【行政職員向けキントーン特設サイト】 – Kintone – サイボウズ
kintone(キントーン)- 料金 – サイボウズ
ブランディングで育てるECコンサルティング会社を経営。 ECコンサルタント兼Webマーケターとして、中小企業向けに100社以上のECサイト構築、50社以上の課題解決を支援してきました。ブランドの魅力を可視化し「選ばれるECサイト」を実現するブランディングデザイナーでもあります。全日本SEO協会会員として、SEOによる集客支援にも定評があります。
10年以上にわたりEコマース支援を行ってきた中で、売上向上には表側の集客・販売戦略だけでなく、裏側を支えるバックオフィスの効率化が大きく関係することに気づきました。そこで現在は、kintoneを活用した業務改善・DX支援にも力を入れ、ECと業務の両面から企業の成長をワンストップで支援しています。
ブランディングで育てるECコンサルティング会社|アイヴィクス株式会社
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